「Art Paris」 近代・現代アートのフェア
4月4日に始まった第26回目のArt Parisは、美術コレクター向けの見本市。だが、ギャラリーの目玉となる作品が出るので、アーティストや美術を学ぶ人、一般の美術愛好家にとっても見逃せないイベントだ。 今年は291のギャラリーから136が選ばれた。6割はフランスだが、25ヵ国のギャラリーが参加している。
会場では価格交渉も珍しくない。普段ギャラリーに行ってもこれほど多くの買い手に遭遇することはない。自宅にある絵の作者を扱っているブースに行き、持っている絵を買わないかと持ちかける人もいて、コレクターの熱気が感じられる。
ふたりのコミッショナーの視点(テーマ):
テーマ①「はかない理想郷」
エリック・ド・シャセー国立美術史学院総長
2人のコミッショナーが、自分のテーマに合ったアーティストを取り上げて解説をつけている。エリック・ド・シャセー国立美術史学院総長のテーマは、「はかない理想郷」。「造形作品は何かを表象したり、装飾として役立つだけのものではない。人々が、人類が理想として実現しつつある世界に目を向け、それについて考え、活動するよう、あるモデルを形にして見せるのも、その役割だ。ところが、長い間続いてきた大きな体制が今、終わりつつあり、わたしたちが求める理想的な世界がはかないものになっている」と言う。
彼が選んだアーティストの一人、フィリップ・ファビエ(Galerie 8+4)は、薔薇の花びら1枚を漆のように黒く塗ったガラスで挟み、この世のものではないような繊細で美しい世界を作り出した。「はかない理想郷」のテーマによく合っている作品だ。
テーマ②「アート&クラフト」
美術評論家ニコラ・トランブレー
もう一人のコミッショナーのニコラ・トランブレーは美術評論家で、「アート&クラフト」がテーマ。「21世紀に入って、伝統的な職人芸を使ったアーティストが目立っている」と言う。彼が選んだアーティストには、メキシコの民衆芸術や、画家で美術教授ヨゼフ・アルバースから学びテキスタイルの技術で作品を作るシェイラ・ヒックス(Galerie Claude Bernard)、奈良の山奥で制作する陶芸家の辻村史朗(Galerie Le sentiment des choses)らがいる。
18のギャラリーが一人の作家にフォーカスした「Solo Show」企画もある。特に目を引いたのが、北欧と韓国のアートを主に扱うGalerie Maria Lund が紹介した、在仏韓国人アーティスト、ミン・ジョンイェウォンだ。彼女の作品は、静かな鉱物の世界や惑星、宇宙の風景を思わせる。ギメ美術館でも個展を開いた注目の作家である。
外国のギャラリーの中では、チリから来たAMS Galeríaが紹介する2人の画家の美しい色彩と独特の質感が際立っていた。リカルド・マフェイは、紙や布が置かれたありふれた室内風景をパステルと油彩で緻密に表現する。壁に貼られたテープや上から垂れる針金がリアルで、だまし絵の要素もある。
ベンヤミン・リラは、手すきの紙の表面にさらに手を加え、色を施した形を組み合わせて立体的な絵画にした。このギャラリーは昨年に続く2回めの出展で、前回も好評だったという。
見本市では、その時美術館で展覧会を開催中のアーティストの作品がよく出る。パリ市近代美術館で回顧展を開催中の近代画家ジャン・エリオンをGalerie Patrice Triganoが、ポンピドーセンターで個展を開催中のハンガリー出身のデジタルアートの先駆者、ヴェラ・モルナールをGalerie Verart Véronique Smagghe が展示している。
コンセプトが近いアート・バーゼルのアートフェアに比べて敷居が低く、誰でも気軽に値段を聞けそうなフェアでもある。(羽)4/7まで
5日(金)12h-21h (入場料:30€ / 学生15€ )
6日(土)12h-20h(35€ / 学生20€ )
7日(日)12h-19h(35€ / 学生20€ )
Grand Palais Éphémère
Adresse : 2 place Joffre, 75007 Paris , Franceアクセス : Ecole Militaire / La Motte-Picquet - Grenelle
URL : https://www.artparis.com
5日(金)12 :00-21 :00 6日(土) 12 :00-20 :00 7日(日)12 :00-19 :00 5日:30ユーロ 学生・グループ15ユーロ 6日−7日 35ユーロ 学性・グループ20ユーロ