土地の新たな人工化(artificialisation des sols : 自然地や農地を舗装や建物などにより人工材料で覆うこと)をゼロにする法案が上下院で可決され、7月13日に最終成立した。新たな枠組みが明確になった反面、人口化ゼロの取り組みが後退したとの批判もある。
土地の人工化ゼロの目標は、2020年の気候市民会議の提案を受けた気候・回復力法(21年8月施行)で規定されている。自然地、森、農地の人工化を2011~20年の計25万haから、31年までに半分の12万5000haまでに抑え、50年には土地の新たな人工化をゼロにする。人工化された土地はCO2を吸収せず、生物多様性低下を加速し、農地を減らし、地下水を補給する水の循環を妨げるため、地球温暖化、水不足、洪水リスクを高めるからだ。
同法では、土地の人工化削減は地域圏や市町村の開発計画への組み込みが義務に。市町村には1万平米(1ha)以下の人工化を特例と認め、それ以上の人工化は原則的に禁止され、3千平米以上の建物の建築計画には県知事(国の代表者)の承認が必要に。また、使われていない人工化された土地の再利用を補助金支給で促す。
この法律の適用デクレが発布されたが、住宅、学校などの開発の抑制を懸念する自治体の不安を反映して停止されたままだった。そこで上院が規制を緩和し、自治体への支援を強化する法案を昨年12月に策定し3月に可決。これが、両院で調整されて今回成立した法案だ。
この法案は国民議会で賛成169対反対29(環境保護派と服従しないフランス党LFI)、上院では326対1で12日と13日に可決。反対票を投じた左派は人工化規制が後退したと批判した。同法案により、国益に関する建設計画(軍事基地、刑務所、TGV路線、原発、EV車用バッテリー製造工場など)は市町村の割当分に入れずに、地域圏共同割当分に含める。つまり、今後10年間で人工化できる12.5万haのうち1割の1.25万haは国家規模のプロジェクトとして扱い、そのうち1万haは複数の地域圏共同の人工化として数える。各市町村への人工化削減目標は、地元議員と国の代表が参加する地域圏ごとの調整委員会で実施が調整されるようになる。
フランスでは毎年、フォンテーヌブローの森に匹敵する平均2.5万haの土地が人工化されている。欧州でもドイツ、スイス、スペインなどが人工化規制の政策を打ち出しているという。折しもこの夏は欧州各地で猛暑や水不足が起きており、地球温暖化を促す土地の新たな人工化の削減は緊急の課題だろう。 (し)