Quiche royale
チャールズ3世が戴冠式のあとの饗宴に望んだのは、英国料理ではなく、代表的なフランス料理の一つ、キッシュだった。そのホウレンソウ、ソラマメ、チェダーチーズ入りキッシュのレシピが英国王室のサイトに掲載されていたので、再現。
まずパイ生地 pâte brisée を作り(コラム参照)、1時間半ほどねかせる。王様はキッシュの底がカリッと焼けたのが好きなのか、ねかせた生地をから焼きするとある。
オーブンを180度に合わせて点火。生地を3ミリくらいの厚さに丸くのばす。バターをぬった直径26センチの型におさめ、はみ出た部分を切りとり、底をフォークでまんべんなくつっつく。クッキングペーパーを型より大きめに切って生地の上に広げ、生地が盛り上がらないように、乾燥白インゲン豆800グラムくらいを均等にのせる。この豆、タルトのから焼き専用として何度でも使えます。これをオーブンで10分ちょっと焼くと生地の縁に軽く焼き色がついてくる。インゲン豆とクッキングペーパーをのぞき、生地の底に軽く焼き色がつくまで8分からもう10分ほど焼き、冷ましておく。
ホウレンソウは水洗いしてから葉柄をとり、さっとゆで、即座に冷水で冷まし、パソワールにあけ、手でしっかりしぼって水気を切り、大きめのみじんに切る。
ソラマメはさやから出し、5分前後、適度の固さになるまでゆで(エダマメのゆで加減です)、薄皮をむく。エストラゴンとパセリはみじん切り。チェダーはおろす。チーズはエマンタールやコンテでもいいのだけれど、ここは英国に敬意を表してチェダーにしたい。
ボウルに生クリームをとり、卵を加えて泡立て器で混ぜ合わせ、軽く塩、コショウ。みじんに切ったパセリとエストラゴンも混ぜ入れる。
オーブンを160度に合わせて点火。
チーズの半量を、から焼きしてある生地の底に敷き、ホウレンソウを一面に広げ、ソラマメをおき、生クリームと卵のミックスを静かに流し入れ、その上に残りのチーズを振りかけ、熱くなっているオーブンに入れる。35分ほどで焼き色がついたらでき上がり。グリーンサラダを添えたい。(真)
【材料4~6人分】
パイ生地pâte brisée(市販を使うのなら〈pur beurre〉と明記してあるもの)、ホウレンソウ600g、ソラマメ300g、液状生クリーム(乳脂肪30%のもの)300cc、卵3個、チェダーチーズ150g、きざんだエストラゴン大さじ1杯、パセリ適量、塩、コショウ。
Pâte brisée
バター120gを冷蔵庫から出し、さいの目に切って30分ほど室温においておく。大きめのボウルに小麦粉240gをとり、塩を小さじ半杯弱(有塩バターを使うのなら不要)を加えて混ぜ合わせる。真ん中をくぼませ、卵黄1個を入れる。柔らかくなったバターを散らし、指先で粉と混ぜ合わせていき、そぼろ状になったら水を大さじ5杯ほど加える。しなやかで指にくっつかなくなるまでこね合わせていき、まとめるような感じで玉にし、ラップで包んで、最低1時間はねかせたい。
Fève
10センチ以上の細長いサヤに包まれたソラマメfèveは、今が旬で、キロ5ユーロ前後。サヤから出してゆで上げ、薄皮につめ先で切れ目を入れ、押し出すようにして豆をとり出す。1キロ買い求めても250グラムくらいにしかならないので、かなり高くつく食材だ。塩を軽く振って熱々を味わうと、新鮮な豆ならではの風味があり、エダマメ同様にビールにうってつけのつまみになるだろう。クミンパウダー少々をまぶせば、マグレブ風味。ベーコンといっしょにいためれば、初夏らしい一品。
Estragon
エストラゴン(タラゴン)は、中央アジア原産で、今は世界各地で広く栽培されているハーブ。その葉は独特の芳香を持っていて、細かくきざんでからグリーンサラダに加えるだけでも、サラダの風味が一変する。新鮮な葉が見つからないことも多いけれど、冷凍ものでもかなりの香りがあるので、冷凍庫に常備しておくと、いろいろと使えて便利。エストラゴンの香りがきいているベアルネーズソースは、タルタルステーキやサーモンのグリルにぴったりのソース。作り方がむずかしいのが難だが、市販のものでもなかなかの風味 (写真)。