「オービュッソン、宮崎駿の空想世界を織る」プロジェクト
フランス中部オービュッソンの町で、宮崎駿監督の映画『ハウルの動く城』(2004)のタピスリーが織り上がり、お披露目会が行われました。
オービュッソンにある国際タピスリーセンター(Cité internationale de la tapisserie)は、2021年3月から《オービュッソン、宮崎駿の空想世界を織る》というプロジェクトを進めています。すでに『もののけ姫』と『千と千尋の神隠し』2作のタピスリーが織り上げられており、これは3作目。全部で5作品が予定されており、現在も別の工房で『ハウルの動く城』の別の場面が織られているほか、2024年には第5作目となる『風の谷のナウシカ』が織り上がる予定です。
センターの講堂に集まった関係者や町の人たち、報道陣らの前で、5メートル四方の大きなタピスリーが広げられると、どっと歓声と拍手。170色のウール、レーヨン、麻などの素材の糸、それらを合わせて別の色を作り出すなど、合計1066もの色が使われています。色鮮やかで、かつ煙や雲の微妙な陰影やグラデーション、城の細部まで、見事な仕上がりです。
それぞれ、入札制で製作を請け負った「アトリエ・ア・ドゥ」と「ジュスト・リシエール」ふたつの工房の7人の職人さんたちが製作にあたりました。日本出身で、オービュッソンでタピスリー職人として活躍する許斐(このみ)愛子さんも携わっています。また、タピスリーを織り始める前に下絵を描き、そこに糸の色の指示を書き込む「カルトン」(下絵)を作成する人、その下絵をもとに糸を染める染織家もタピスリーの前に並んで、観衆の拍手喝采を受けました。
古くからタピスリーで有名だったオービュッソンと隣町フェルタンのタピスリー工房は、1665年には「王立製作所」として認められ発展してきました。現在3300人ほどの小さな町の人口の1割ほどが、タピスリーの仕事に携わっています。2009年には「オービュッソンのタピスリー」としてユネスコ無形文化遺産として登録され、国際タピスリーセンターは、タピスリーの歴史的作品のコレクションを所蔵・展示し、職人の養成なども行っています。
織り上がったばかりの作品は、今週末、国際タピスリーセンター内の「エスパス・ミヤザキ」という特別展示室で観ることができます。(集)
オヴニー特集号「オービュッソン、宮崎駿を織る」もあわせてお読みください。
行き方、ホテルなども記載しています。
制作現場を訪問。
オヴニー今年1月「ハウルの動く城」タピスリーを織るアトリエを訪ねました。
この日は「アトリエ・ア・ドゥ」と「ジュスト・リシエール」ふたつの工房の職人さんたち3人が、大きな織機の前に並んで作業。どちらも、社員が10人に満たない小規模の工房なので、入札で勝った「アトリエ・ア・ドゥ」が「ジュスト・リシエール」とともに作業することにしたのだそうです。
ふたつの工房には、5メートル四方という大判タピスリーを織るための大きな織機がないため、国際タピスリーセンターのアトリエの織機を使って織りました。センターには、地元の工房が使える大型織機を備えたアトリエが2室あるのです。
Cité internationale de la tapisserie
Adresse : Rue des Arts, AUBUSSON , FranceTEL : 05 55 66 66 66
アクセス : パリAusterlitz駅から国鉄でLa Souterraine駅。駅からバスで
URL : https://cite-tapisserie.fr/
火休、9h30-12h/14h-18h。7月と8月は10h-18h、火曜は14h-18h。入場料 : 8,50€/6€/18歳未満無料。元旦から2月2日まで休館。12月25日休館。