大人と子ども、一緒に楽しむ展覧会!
学校のバカンス・シーズンで、子どもも大人も一緒に楽しめそうな展覧会がいくつも開催されている。4D映像の没入型体験や、ホログラムを使ったもの、ゴーグルを装着してのバーチャル・リアリティ(VR)、スマホにアプリを入れてゲーム感覚で見学する展示や、歴史上の人物を演じる役者さんが話しかけてくるものなど、従来の見せ方に一工夫も二工夫も加えた、アトラクション性の高い展覧会をいくつかピックアップした。
Le Monde de Clovis
クローヴィスの時代の人になって人生ゲーム。
Musée d’Archéologie de Saint-Germain-en-Laye
サン・ジェルマン・アン・レー城内の考古学博物館では「クローヴィスの世界」展を開催中だ。副題は「あなたが主人公の展覧会」。見学者がフランク王国の初代国王クローヴィス(466-511)の時代の人になって「人生ゲーム」をしながら当時の社会、価値観、慣習などを感じるものだ。
クローヴィスは父親が死んだ481年に15歳でフランク王国の王座に就き、祖父メロヴィクスの名にちなんだメロヴィング朝を開いた。当時ガリアの中心地はトゥルネー(現ベルギー)だったが、クローヴィスはほかの諸勢力を制圧し領土を広げてゆく。キリスト教徒の妻クロチルドにならい改宗したことや、パリ遷都でも有名だ。
そんな時代に生きた、出自の異なる4人の登場人物の一人になってみよう。
写真左から)アンダルシウス:農家の子で勇敢さが売りのエネルギッシュな男性。バチルド:アミアンで奴隷の子として生まれた知性的な女性。服のデザインをし、富裕層の女性を顧客につけたいと思っている。メダール:フランク人の高貴な家の子で教養があり、父親のように戦士として名をあげたい。ジュヌヴィエーヴ:両親はパリに定住したシリア人でシルクなどを商っているが、フランク人社会の中で自分の地位を獲得したい。…誰にするかを選んだら、展覧会の入口でその人物の冊子をもらうか、スマホにアプリを入れて見学する(ゲームなしの見学も可能)。
各人物が、人生の様々な出来事に遭遇し、どう身を振るかの選択を迫られる。その選択により「カネ」と「栄誉」のポイントが貯まったり減ったりし、最後にその合計で「出世」の度合いが決まる。
例えば結婚。アンダルシウスなら家で働く奴隷の女性と結婚もできるがカネは+10pt、名誉は+0pt。その上、金持ちの友人たちとは疎遠になる。家が土地持ちの女性とならカネ+20pt、名誉+10pt。元老院議員の娘なら栄誉+40pt、でも嫁の父親に金を払うからカネは-20pt。選択は習い事(ラテン語、算数、ルーン文字、農耕)、事件に巻き込まれて裁判などの災難も…人生は選択の連続だ。
だが、栄誉とカネのポイントをためるとどうなるのか?(ここからネタバレ)立派な墓が作れるのだ。富とカネがあれば祭壇に近く、足りなければ屋外。現実の厳しさをも感じさせる、切なく楽しい展覧会だ。5/22まで。
● Le Monde de Clovis
Musée d’Archéologie nationale – Domaine national de Saint-Germain-en-Laye :
Château -Place Charles de Gaulle
78105 Saint-Germain-en-Laye
musee-archeologienationale.fr/
RER-A線 Saint-Germain-en-Laye下車すぐ。
Tél:01.3910.1300
火休、10h – 17h
6€/26歳未満無料。
ガリレオ459歳の誕生日をプラネタリウムでDJと祝う。
”La teuf à Galilée”
Planétarium de la Cité des sciences et de l’industrie
天文学などで大きな貢献を果たし、「近代科学の父」と呼ばれるガリレオ・ガリレイが生きていたら今年で459歳。その誕生日をプラネタリウムでDJとともに祝おうという科学産業博物館のオリジナル企画。
DJ 役のイザベルさんが登場し、ガリレオが生まれ育ち、その後大学でも教鞭をとったイタリアのピサと会場のプラネタリウムをスカイプでつなぐ。最初に登場するのはガリレオの母親だ。地動説を唱えた息子が、宗教裁判で異端とされ自宅軟禁の身なので不安でたまらない。同時代の哲学者ジョルダノ・ブルーノは異端の嫌疑をかけられて火刑で死んだのだから当然だ…。
DJさんが、簡単にガリレオの人生をおさらいしてくれた後、パーティーが始まる。ガリレオのメセナだったメディチ家のコジモ2世、地動説を擁護したケプラー、ガリレオに地動説を放棄するよう強要した教皇ウルバヌス8世ら、個性の強烈な人物が次々に登場(ケプラーはパーティーが苦手ゆえ手紙のみ)。地球平面論者も紛れこんで持論を主張しようとしては排除される。
ガリレオはオランダで作られていた望遠鏡をさらに改良して天体を観察し『星界の報告』を著した。その研究の延長線上にあるともいえるハッブル宇宙望遠鏡 (打ち上げは1990年)やジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(2021年)から宇宙の画像が送られてきたり、宇宙飛行士トマ・ペスケやレディ・ガガからもお祝いのメッセージが届く。
音楽は、子どもの入場者が多いからといって童謡、じゃない!デュア・リパ、ボウィ、ダフト・パンク、A-ha…大人も子どもも「ヒューヒュー」、「ウェー!」とノリノリだ。カラオケタイムにはフランスのロックグループTéléphoneの「Ça (C’est Vraiment Toi)」を大合唱。テンポが早いから、ユーチューブを観て練習して行こう。
あっという間に40分が過ぎてしまい、小さな子どもたちも 「短か過ぎる!」とDJに文句を言っていた。また、ガリレオは何歳まで生きたの?どうやって死んだの?などと質問もしていた。
● DJ ciel – La teuf à Galilée
Cité des sciences et de l’industrie-Planétarium :
30 av.Corentin Cariou 19e
M°Porte de la Villette
〜3/5 (日)+4/11 〜5/7。 14h。
博物館入場料 (12€/9€/2〜5歳3€) のみでプラネタリウムも入場可だが要予約。
www.cite-sciences.fr