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ノエルに輝くアルザスへ。《その2》
アルザス地方のノエルは盛大で美しいといわれるけれど、他のフランスと何が違うのだろう。今回はストラスブール郊外、アルザス中部セレスタ、南下してミュールーズと、アルザスのノエルの習慣について話を聞きました。また、この地方に伝わるノエルには欠かせない伝説の人物や、ツリーの由来を教えてもらった。
2) Bredele (Bredle)ブレデル
ノエルのために焼くけれど、ノエル前になくなるお菓子。
「ノエル前になると友達がブレデルをくれる。彼女は毎年33キロくらい焼くから」とコルマール在住のマリーさん。「え?」と耳を疑った。33キロ?… 一個人が作るビスケットの量としての常識を超えている…。その友人は9月から砂糖を買い始めるという。
家庭でのブレデル作りは「待降節*」の4週間行われる。シナモン、クローブ、アニスなどのスパイス、クルミ、ヘーゼルナッツなども入る様々な形のビスケットは、焼いたら保存用の缶箱に入れ、少しずつ食べながらノエルを待つのだ。
しかし「難しいのはブレデルを作ることより、ノエルまでもたせること」と言われるほど、作る/食べるバランスが難しい。食べるペースが早すぎる場合はブレデルの箱を隠す家庭もあるほどだ。前出マリーさんの家でも、おばあちゃんのブレデルはノエルまでもったことがないという。
アルザス中部、セレスタにある「Maison du pain」を訪れた。パン文化と職能を保護するためパン職人協会により設立されたもので、1522年創立のパン職人組合の建物のなかには工房とショップ、パン博物館、ティーサロンがある。
ブレデルはどのノエル市でも買えるが、ここでは35種ほどを工房で作って販売していて、すでに詰め合わせにした袋もあれば、好きなものを詰めてもらうことも可能。好物シナモンが入ったものばかり500g買ったが、食べ始めたらやめられず数日でなくなった。1ヵ月で「33kg」を焼く人の話が現実的に思えてきた。
パン博物館では、農耕具からアルザス銘菓クグロフやアイスクリームの型、様々な道具を陳列。アルザスでは18世紀頃、結婚する人たちに、親近者が袋を縫い、新郎新婦の名前を書いて小麦粉をいっぱいに入れて贈ったというが、その袋もあった。また、パン組合の人たちは、外敵の侵入の際は町を守る民兵の役割も担っていたという。
工房で聖ニコラの日(12月6日)に食べるという人型パン「マネル」作りに参加した。準備されていた生地をこねて形成するだけだったが、初めてのパンは焼きあがるとやはり嬉しいものだ。
★ 待降節 (Avent) は、今年は11月27日から。この日からいっせいに、リースの用意、ノエルのマルシェほか一連のイベントがスタートした。12月6日はサン・ニコラが子どもにノエルのお菓子を配る日で、小学校にもサン・ニコラがやってくる。13日は窓辺にロウソクを、21日にはツリーを飾り、24日夜はイブの晩餐、28日は産着に包まれた幼子イエスを象徴するクリストシュトレンを食べ、31日は代父母(名付け親)が代子にプレッツェルを贈る。6日の公現祭はガレットやクグロフをいただいてノエルの季節を締めくくるのが伝統だという。
★★ユネスコの 「世界の記憶」に登録されている、Bibliothèque Humaniste(人文図書館)も訪れます。お楽しみに。
取材・文 : 編集部、児玉しおり
取材協力: Alsace Destination Tourisme
アルザス地方観光局
Maison du pain d'Alsace
Adresse : 7 rue du sel , Séléstat , FranceTEL : 03.8858.4590
アクセス : SNCF Sélestat駅
URL : https://maisondupain.alsace/
12/31まで : 月水木土 : 9h-18h、火金 : -18h30。12/25と26休、1/16-30休館。パン博物館の入場料 : 大人 5€ / 7-18歳:4€ / 6歳以下無料。