民間コンサルタント会社多用は妥当か?
大統領戦の議論に一石投じる。
上院の報告書をきっかけに、政府が民間コンサルタント会社を多用しているとの批判が上がっており、大統領選の野党候補からはマクロン批判の声が上がっている。
上院が3月17日に公表した調査報告で、政府による民間コンサルタント会社の利用を「アメーバのように広がる現象」と批判し、さらに米コンサルのマッキンゼーの仏子会社が2011~20年の10年間、法人税をまったく払っていないと指摘した。同社の公共部門部長が2017年の大統領戦でマクロン候補を無報酬で応援したほか、マッキンゼーの元社員数人がマクロン政権に入ったことから、マクロン氏の同社優遇を疑う向きもある。
オリヴィエ・デュソー会計担当相らは30日に「何も隠すことはない」「(この件は)政治議論に利用されている」と相次いで反論。高級官僚制度改革で22年以降は少なくともコンサル支出を15%減少すると答弁。マクロン大統領も発注は公共調達の規則に則っていると反論し、ルメール経済相は法人税については税務総局の調査を実施中で、もし脱税が発覚すれば追徴金を徴収すると発言するなど、大統領選中のスキャンダルになりかねない疑惑の火消しに必死だ。
2021年は8億9390万€
ル・モンド紙26日付によると、歴代政府は戦略的助言や経済的な鑑定評価に従来から民間コンサルを利用してきたが、マクロン政権では黄色いベスト運動の陳情収集・総括、市民気候会議、司法三部会などの市民の意見を吸い上げて政策に反映させる「市民の意見聴収」を頻繁に行い、その実施・総括を独ローランド・ベルガー、仏ユーログループなどの大手コンサルに依頼している。
こうした民間コンサルに委任した市民聴取は2018~22年で約30件、費用は総額2400万€以上に上るという。これらを含めた民間コンサルへの発注は18年の3億7910万€から21年には8億9390万€と急増したと上院報告書は批判する。仏マッキンゼーは2018~20年の政府の全コンサル支出の1%を占め、ユーログループ社の10%、キャップジェミニの5 %にははるかに及ばないが、重要な業務を受注しているとル・モンド紙は分析する。Covid-19のワクチン・検査政策や退職制度、住宅手当、失業保険制度の改革など18~21年に約40件、総額で推定2800万から5000万€のコンサルタント業務を受注したという。
特にコロナ関係では、緊急事態を理由に個別入札なしに関連業務を続けて発注するやり方もとられたと上院報告書は指摘する。野党からは、本来は官僚がすべき仕事を、多額の費用をかけて民間会社に委託するのはおかしい、などの批判の声が上がっている。
10年以上にわたる脱税疑惑で予備調査
仏マッキンゼーが10年間、法人税を払っていないという疑いについてはどうだろうか。同社はその10年間に「4億2200万€の社会保険料と税金を払った」と反論しているが、法人税については数字も出さず、明言もしていない。たとえば同社の売上は2020年で3億2900万€だが、管理費、人員支援費、商標使用料などの名目で米本社への支払いを発生させることによって赤字を計上し、法人税を払っていない可能性を仏紙は指摘する。こうした会計の「最適化」は違法ではないが、その10年間で同法人は6000万€相当の「節税」をしているという某会計会社の試算もある。金融検察局は4月6日、予備捜査を始めると発表した。(し)