ウクライナ戦争勃発とともに、ロシア文化の自粛や排除ムードが高まり、暗い影を落としている。パリ8区の映画館バルザックで開催予定だった恒例のロシア映画祭は延期を発表。本映画館は露系オーナーで、普段から露映画の紹介に尽力しており苦渋の決断だったろう。
だが完全に諦めたわけでなかった。会場を巨大スクリーンを持つ9区のマックス・ランデール・パノラマに移し、ロシアとウクライナの映画人への連帯を示す、一晩限りのイベント「パリとイル・ド・フランスのロシア映画祭 FESTIVAL DU FILM RUSSE DE PARIS & D’ILE DE FRANCE」に変更。3月23日にロシア人ウラジミール・ビトコフ監督の『Maman, je suis à la maison』を上映する。これは息子の戦死を信じぬカバルダ・バルカル共和国の母親のドラマだ。
ロシア文化が排除される一方、ウクライナ文化支援は目立つ。戦争開始直後から、世界三大映画祭常連のウクライナ人セルゲイ・ロズニツァ監督の旧作が劇場でリバイバル公開へ。またパリの有力ドキュメンタリー映画祭「Cinéma du Réel」は、彼の新作『Mr.Landsbergis』を開幕作品に選んだ。
これは約30年前のリトアニア独立革命を、当時の指導者ランズベルギス氏と振り返るドキュメンタリー。上映会で監督はリトアニアを現在のウクライナと重ね、「いつかロシアの指導者たちの裁判が起きることを望む。私は『キエフ裁判』と言う名の映画を作ろう」と語った。
このようにロシア批判も辞さないロズニツァだが、複雑な問題に巻き込まれてもいる。彼は反体制派の露映画人への連帯を表明したが、それが「全ての露作品をボイコットせよ」と訴えるウクライナの映画アカデミーと対立、同アカデミーから離れることになった。
さて渦中の監督だが、彼が親露派ヤヌコーヴィチ大統領に対する民衆蜂起を描いた『Maidan』は戦争終了までyoutube上で無料配信されている(英語字幕)。この機会に鬼才の作品に触れてほしい。(瑞)
Max Linder Panorama
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