Covid-19感染の状況改善に伴い、6月9日、テレワークが可能な職種における原則100%のテレワーク規則が終了した。とはいえ、すぐに毎日出勤というわけではなく、ボルヌ労働相の発表した政府方針によると、当面は週に3日テレワーク、2日出勤というハイブリッド方式を指標とし、各企業で労使交渉によりテレワークの週最低日数を決めるよう促している。
テレワークが可能な職種の人は就労者全体の約6割といわれるが、テレワークをしてきた人々の反応は様々で、体験談を募った6月18日付電子版ルモンド紙の報道では、「コロナ収束後もテレワークを続けたい」「通勤時間が省けるため仕事の効率がいい」「子どもと過ごす時間、家事時間がフレキシブルに組めストレスが少ない」などの肯定的意見も多い。他方で、同僚との接触がないため孤独、仕事とオフの区別がつけにくく働きすぎになるなどの否定論もある。ある人事コンサルタント会社の最近の調査によると、テレワークをする人の48%が出社に消極的という。コロナ禍中にパリ首都圏から地方に引っ越した人たちがそのまま仕事を続けたいという相談を受ける企業もかなりあり(ある調査では企業の30%)、テレワークは権利かという問題も投げかける。
こうした状況を踏まえて、当面週3日のテレワークが基準の公務員に対し、民間では労使交渉により職務上可能な社員のテレワークの週当たりの最低日数を決めようとしている。夏の間を週2~3日出社の移行期間とし、必ずしも9月に100%出社を目標とせず、ゆっくり進める慎重姿勢をとる企業も多い。一方で、自動車のステランティス社(旧PSA)のように、テレワークを継続・拡大しようとする企業もある。同社は、非製造部門の社員が希望すれば週3日までテレワークできる合意を4月に労組と交わし、社員個別のデスクから、コスト減にもなるフレックス・オフィスに移行する方針。従来は一部の企業に限定されていたテレワークが今後は拡大しそうだ。
仕事と家庭の両立、通勤ストレスの解消、自立的な働き方……6月17日付のル・ポワン誌は「もう働きたくないフランス人たち」というタイトルで、給与を約8割保障された「部分的失業者」やテレワークに慣れた人が以前の働き方に戻りたがらない現象、従来の仕事中心のライフスタイルを見直して生活の質を向上させたいという考えが広がっていることを指摘している。コロナ禍は仕事と生活への考え方にも思わぬ影響を及ぼしたようだ。(し)