Pérouges
リヨンから北東35キロ、ペルージュは丘の上の城塞村。1988年に早くも「フランスの最も美しい村」に選ばれている。古くから軍事戦略上の拠点とみなされ、ドーフィネ公国とサヴォワ公国が支配権をめぐって対立。しかし、1468年のサヴォワの戦い以降は破壊を免れ、現在にいたるまで古い家屋や街並みが残されている。1601年のリヨン条約の締結によりフランスに組み込まれた。
村の入り口には15世紀建立の聖マリ=マドレーヌ教会が立つ。要塞の機能を備えた珍しい教会で、厚い壁には狭間(さま:防御用の穴や窓)もある。教会にはドラゴン退治をする村の守護聖人の木の像が。どこか弁慶を思わせる槍を持つ聖ジョルジュさんに、村に入る前に挨拶をする。
城門をくぐると石造りの家々と石畳が眼前にひろがる。電線や広告など野暮なものはない。道の真ん中を走る溝は下水道の跡だ。総面積18.97km²の小さな村だが、中世を真空パックし封じ込めたような景色に目移りし、足がなかなか前に進まない。
道はゆるやかに弧を描いて延び、小道と交わる。蔦(つた)に覆われた壁、年季を感じる窓や伝統的な鎧戸(よろいど)。たまにトウモロコシがぶら下がっているのも可愛らしい。
村をぐるっと周回する通りrue des Rondesにはアーティストのアトリエも多い。偶然入ったアトリエ兼ギャラリーでは、ノルマンディ地方出身の画家クラリュさんに出会えた。シャガールの絵を見て感動し、「私も絵を描いて暮らそう」と決意したとか。この村は芸術家を惹きつける磁力を発しているのだ。サン=テグジュペリやユトリロもこの村を愛したというのもうなずける。
ガレットを売る店もあった。ブリオッシュ生地を伸ばした黄金色のガレットはペルージュ名物だ。ピザのように大きいが、カットして販売してくれる。村の中心の広場 Place du Tilleulへ到着。その名のとおり、中央には西洋菩提樹tilleulが枝を広げている。“自由の象徴”として革命直後に植えられた大木で貫禄がある。
散策の後は広場前の老舗レストランHostellerie du Vieux Pérougesへ。郷土料理やガレットに舌鼓を打てば疲れも吹き飛ぶ。
広場につながるrue des Princesにはサヴォワ公爵の邸宅跡にある郷土博物館が。ペルージュは中世の昔から織物業で繁栄したが、産業革命のあおりなどで19世紀初め頃から衰退した。20世紀頭に村は消滅の危機に陥る。しかし、村の保存委員会が立ち上がり修復保全活動が始まった。そんな町の歴史や先人の生活の足跡をたどれる場所だ。
屋上には見晴らし台もある。年月を重ねた瓦屋根や壁の石が枯れた色合いをにじませる。ご褒美のような景色を胸に焼き付けた。(瑞)
INFORMATION
■ 交通
リヨンから列車でPart Dieu駅からMeximieux Perouges駅まで31分、バスならリヨンのPont Guillotièreから132番でMeximieuxGendarmerieまで1時間8分。Meximieux駅からペルージュ村までは約1.5キロある。リヨンからペルージュや周辺を効率よく巡る日本語ガイド付きツアーもお勧めだ。
www.ecrinsdefrance.fr/circuits-par-theme/beaux-vollages
■ 観光局
Route de la Cité 01800 Pérouges Tél.09.6712.7084
ペルージュの地図がPDFでダウンロードできる。
www.perouges-bugey-tourisme.com/brochures
■ Hostellerie du Vieux Pérouges
村の中心のティユル広場にある、歴史的建造物の建物を活かしたホテル兼レストラン。創業1912年。村の名産“ペルージュのガレット”発祥地でもある。100年前と変わらぬメイド服で給仕する。
Place du Tilleul 01800 Pérouges Tél.04.7461.0088
12h-14h/19h-21h、昼夜ともメニュー44€。
www.hostelleriedeperouges.com
■ Musée du Vieux Pérouges
14世紀築のサヴォワ公爵の邸宅跡にある郷土博物館。ある。村の歴史を保存し公開。家具や調度品、美術品、タピスリー、考古学コレクション、歴史的資料などを展示。現代アートの展示をすることもある。町を見渡せる展望台は一見の価値がある。
Rue des Princes Cité Médiévale 01800 Pérouges
11月~3月は休館(グループ見学は可)詳細はサイトで確認。4€
patrimoines.ain.fr/n/musee-du-vieux-perouges/n:1252