『 Dans un jardin qu’on dirait éternel / 日々是好日(にちにちこれこうじつ)』フランスで公開(8月26日)。
タイトルは、禅の言葉である「日日是好日(毎日が好い日)」から。森下典子の自伝的茶道エッセイ『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』の映画化だ。肩の凝らない雰囲気で、茶道の魅力や奥深さに目を開かせてくれる。在仏日本人には茶道の描写ひとつひとつが親しみやすく、愛おしく、同時に新鮮な発見もあることだろう。日本文化を愛する外国人の友人や家族と一緒に見るのも、是非おすすめしたい。
母親に勧められ、何とはなしにお茶の世界に足を踏み入れる20歳の大学生、典子(黒木華)。従姉妹の美智子(多部未華子)と一緒に、お茶の師匠、武田先生(樹木希林)のもと、茶道のいろはを学んでゆく。習い事は続けながらも、確固たる将来設計もないままに、恋に仕事に悩んでは立ち止まり、また歩き出す……。そんな等身大の女性の姿が、共感を誘う。自然や人との出会いに心を開き、茶道具や和菓子、着物に心を配る。その愉しさ、豊かさ。気がつけば生活の一部になった茶道とともに、典子の人生の季節も、ゆっくりと巡り続けるのだ。
「茶道」をテーマにした映画は数あれど、これほどリラックスして見られるお茶映画も珍しい。黒木華のほんわりした存在感に加え、樹木希林の飄々としながらも芯のある先生っぷりが、ご本人のキャラクターと相まり作品にユーモアと安心感を添える。「まずは形から。後から心が入るのよ」と説く希林先生の言葉は、正座を我慢してでも、いつまでも聞いていたいと思わされる。
スマホをのぞけば、非現実なニュースばかりが目につくこの頃。フィクションを超える現実の異様さに、日々心がかき乱される。そんな時代に平穏をもたらすオアシスのような作品。巡り来る季節に身を委ね、五感を研ぎ澄ませ、一日一日を丁寧に過ごす。平常心こそが心を潤す茶道とは、なんと贅沢な振る舞いだろう。
病に侵され残された時間を悟っていた樹木希林が、熟考の末に出演を決めた作品。激動の時代を生きる私たちに、シンプルだが大切なメッセージを込めてくれたと感じる。監督は、役者の個性を引き出し、スクリーンでより一層輝かせる実力派の大森立嗣(『さよなら渓谷』『セトウツミ』)。(瑞)
*読者プレゼント*
『Dans un jardin qu’on dirait éternel / 日々是好日(にちにちこれこうじつ)』フランス公開にあたって、入場券をオヴニー読者10名さまにプレゼント。
〈『日々是好日』チケット希望 〉とお書きになって、お名前、ご住所をご記載の上、monovni@ovninavi.comまでお送りください。
締め切りは8月23日(日)23時59分。