ブルゴーニュ地方の森のなか、中世の城を建てている人たちがいる。修復でも、どこかの城の復元でもない。13世紀、この森の一角に城を構えたであろう人物像を想定し、その領主にふさわしい設計をし、30年間かけて城を築くという一大建築プロジェクトだ。
当時の建築方法を伝える文献がないため、途絶えてしまった築城のノウハウはこの時代のステンドグラスに描かれた職人、写本の挿絵、建築現場の帳簿などを参考にする。絵に道具が描かれていたとしても、どのように作られ使われていたのか分からないことも多く、試しながら工事を進めるという、実験考古学だ。
「城が完成したら見に来るなんて、遅すぎますよ」と、着工時からの現場監督フロリアン・レヌッチさん。城そのものより、建築の過程こそが、中世の築城を、ひいてはこの時代そのものを理解するのに大切なのだ。
22年前は更地だった場所に、いよいよ城の姿がはっきりとしてきた。研究者や職人が行き交う現場は、見学者を迎え入れている。行って、疑問に思ったことを何でも職人さんたちに聞いてみよう。さまざまな発見に、「中世」がそれまでとは別世界に見えてくる。(六)