楽しみながら学べる展覧会。
学校のバカンス・シーズンで、子どもも大人も一緒に楽しめそうな展覧会がいくつも開催されている。4D映像の没入型体験や、ホログラムを使ったもの、ゴーグルを装着してのバーチャル・リアリティ(VR)、スマホにアプリを入れてゲーム感覚で見学する展示や、歴史上の人物を演じる役者さんが話しかけてくるものなど、従来の見せ方に一工夫も二工夫も加えた、アトラクション性の高い展覧会だ。
オープンしたばかりの 「Cité de l’Histoire シテ・ド・リストワール」では、今を起点に、フランスの歴史をたどりながら1200年さかのぼったり、中世にタイムスリップしてパリのノートル・ダム大聖堂の建設現場に行くVRも体験できる。
ラ・ヴィレット科学産業博物館のプラネタリウムでは、ガリレオの誕生日を、音楽(カラオケも)と映像で祝う。技術を駆使すればいいわけではないが、こういった展覧会のおかげでクローヴィス、ジャンヌ・ダルク、ガリレオやナポレオン、ドゴール、ルイ14世、15世ら、歴史上の人物に「会った」ことがあるような気になって、その人物にも興味が湧いてくるというものだ。子どもの頃、こんな展覧会があったら、もっと勉強していただろう、というのは言い訳か。(集)
タイムマシーンでフランス1200年の歴史をさかのぼる。
Cité de l’Histoire
ラ・デファンス新凱旋門の地下に、この1月オープンした Cité de l’Histoire。6000㎡のスペースに3つの歴史アトラクションがある。ディレクターはテレビなどでおなじみの歴史家フランク・フェラン、館内書店やアトラクション内の内装は人気インテリアデザイナーのジャック・ガルシアという、新しい”学び”の場を訪れた。
「フランス史没入体験コース Parcours immersif」 から試してみよう。16の部屋があり、部屋ごとにフランス史の一幕が音、映像、セットとともに再現されている。一見ろう人形館のようだが、ナマの人間が話しかけてきたりもする。各部屋でナレーションが終わるとベルが鳴り、次の部屋へと進む。こうして見学を終えるとフランスの1200年を”体験”したことになるわけだ。
最初の部屋はどこかオフィスのようだ。ウォークマンや初期のコンピューターが置いてあり、テレビにはフランス初の女性首相エディット・クレッソン氏が写っている(在任1991-92。「日本人は蟻のように働く」などの発言で日本でも有名に)。
次の部屋はシャルル・ド・ゴール元大統領の書斎、1954年。第二次大戦中ドイツに占領されたフランスを解放した英雄は戦後臨時政府の首相となるが辞任、書斎で「回顧録」を執筆中だ。さらに時をさかのぼり、第一次世界大戦の激戦地ヴェルダンの戦場へ。植民地から徴用された二人の兵士は命を落としたのかヘルメットだけが戦場に残されている。
次は1903年の小学校の教室。若い先生が生徒(私たち見学者)を着席させると「フランスがアルザスとロレーヌ地方を失ったのは何年だったかな?」と歴史の授業がスタートする。ずっと先生の授業を受けていたい!が次の部屋へ行かされる…。
このようにタイムマシーンのなかを、パリコミューン、炭鉱の奥底、ナポレオンのアイラウの戦い、と部屋から部屋を時をさかのぼってゆく。フランス革命の部屋は、ある家具職人の工房だ。窓からはバスティーユ監獄が襲撃されているのが見える。職人さんが「あんなことしてパンの値段が下がるもんかね」と腹を立てている。今のフランスで起きていることと重なるだけに、ひと言かけたいところだ…が次の部屋へ。
ルイ14世と愛人ポンパドゥール夫人の馬車のなかでの密会、ジャンヌ・ダルクの登場、ノワイヨン でのユーグ・カペーの戴冠式、セーヌ川のほとりをバイキングが襲撃した9世紀の「パリ包囲戦」 で見学が終わる。
40分間で1200年を振り返ろうというのだから表面的になるのは仕方ない。一緒に回った人は「パリ・コミューン、啓蒙主義の影響などはもっと詳しくすべき」と指摘した。とはいえ、自分が疑問を抱きながら生きている「今」から時をさかのぼるのは、かつての教科書のように突然先史から学ぶより、効果的であるように思えた。
Cité de l’Histoire内 ほかのアトラクション
● Couloir du temps – Frise chronologique
時の廊下
廊下がそのまま大きな世界史年表になったような空間だ。廊下中央には25のタッチパネルが置かれていて、年号に触れると、正面の壁にその出来事を表す画像やビデオが映しだされる。ここでは、紀元前5世紀から現代までの400ほどの重要な出来事が詰まっている。
● Ellipse 360°
楕円形の大きな部屋に座ると、9台のプロジェクターが壁にぐるり360度ビデオを映写する。音声も6ヵ所から出る4D映写室では歴史的人物を30分のフィルムで紹介する。当館オープンにあたっての第一弾は文豪ヴィクトル・ユゴー。ナポレオン軍に従事していた父と資産家の娘だった母の間にブザンソンに生まれ、兄ふたりと過ごした子ども時代から、結婚、亡命など波乱に満ちた人生が、ユゴーの文章や愛人ジュリエットとの書簡の抜粋などで語られる。
● Eternelle Notre-Dame
永遠なるノートル・ダム
Ovni931号でも紹介した 「永遠のノートル・ダム」VRは、Cité de l’Histoire でも体験できるが、(本物の)パリのノートル・ダム大聖堂前の広場地下にもオープン。以下サイトから両方の予約が可。
中世の職人さんの案内で、大聖堂の建設現場へ。850年の歴史を刻んだ人物とすれ違ったり、イベントに立ち会う。高所恐怖症の人はご注意。
●Eternelle Notre-Dame (パリ・ノートルダム大聖堂前):
入口は6 rue de la Cité 4eの向かい
RER-B線、C線 Saint-Michel / M°Cité
当日35€/25€ (前売り30.99€/20.99€)。
www.eternellenotredame.com
● Cité de l’Histoire :
1 parvis de la Défense 92400 Puteaux
M° La Défense 火-日、10h-20h(木-土-22h)。
23.99€/18.99€ 7歳未満無料。書店、ブティックあり。
カフェテリアでは軽食も可。www.cite-histoire.com
☞ あすは、「クローヴィスの世界」展、「ガリレオ459歳の誕生日をプラネタリウムでDJと祝う」について掲載します。