MUCEM
欧州・地中海文明博物館
旧港の入口、「コスケール・メディテラネ」の前に建つMuCEMは来年でオープン10周年、もうマルセイユの顔だ。それまでは観光客もあまり来ない地区だったのが、このミュージアムができて人の流れが変わったという。「屋上庭園」は海の眺めがすばらしい。ルディ・リチオッティ設計の建物は、マスクメロンの網目のようなものに覆われているが、この網が強い日差しを適度に遮断し、風を通すのだ。海で遊ぶ元気な子どもたちの声も聞こえきて、マルセイユ情緒も満喫できる。
1937年にパリに開館した民衆伝統文化博物館の所蔵品をもとに、範囲を欧州文明と地中海文明へと広げ、考古学、人類学、歴史、現代美術などを幅広く扱うこの美術館でエジプト展が始まったので紹介したい。
”Pharaons superstars”
「ファラオ スーパースター」展。
「ファラオ スーパースター」展は、「古代エジプトの王や王妃が、後世の人々にどう捉えられたか」をテーマにしている。タイトルが示すように、学術的というよりサブカルチャー的な要素が強い。企画の発端は、エイズ予防史を研究中のキュレーターが、所蔵品の中に古代エジプトの王、ラムセスの名を付けた米国製コンドームを見つけたことだった。なぜ古代エジプトの為政者の名前を商品名にしたのか。調べるてみると、ラムセスという車、クレオパトラというウィスキー、王妃ネフェルティティをモデルにしたガードルなどが次々と出てきた。キッチュの極め付きは、偉大な王として名高かった紀元前2000年のセソストリス1世または3世により、ナポレオン・ボナパルトが偉大な征服者たちのパンテオン(霊廟)に迎え入れられる図を描いた1837年の版画だ。
外国では知名度が低い為政者がエジプトでは長く偉人として崇拝されていたり、逆にエジプトでは忘れられていた王・王妃が20世紀になって世界的に有名になったという現象も紹介している。後者にはツタンカーメンやネフェルティティがいる。美術の世界では、生前売れっ子だった画家が、没後あっという間に忘れられたり、ゴッホのように生前売れなかった画家が没後世界的な有名人になるケースが多々ある。古代エジプトについても同様の現象があることは思いもしなかった。
アーモンド形の目が美しいアケナトン王の頭像など、古代エジプトの展示品には素晴らしい美術品が多い。難しいことを考えなくとも文句なしに楽しめる展覧会だ。(羽)10/17まで
Mucem :
7 promenade Robert Laffont 13002 Marseille
Tél : 04.8435.1313 www.mucem.org
開館時間 : 7/8までは10h-19h、7/9-8/30は10h-20h。
入場料:11€/7.50€
交通手段はコスケール洞窟に同じ。
Cosquer Méditerranée
Adresse : Promenade Robert Laffont , 13002 Marseille , FranceTEL : Tél : 04.9131.2312
アクセス : M°Vieux-PortかJoliette駅から徒歩10分。 バスは82,82s,60,49番。Littoral Major かFort Saint-Jean下車。
URL : www.grotte-cosquer.com
9/25までは9h-21h (時期により開館時間が異なるので要確認)