コルマールは、神聖ローマ帝国の自由都市だった、アルザスの古い町。世界中の観光客が目指すこの町の「宝石」は 、グリューネヴァルトの祭壇画で知られるウンターリンデン美術館だ。新装オープン以来、行った人たちの反応はみな「素晴らしい」。新しくなったウンターリンデンは評判通りで、ますます宝石の輝きが増していた。
もとはドミニコ会女子修道院だった建物を、15〜16世紀美術の美術館にしたものだった。改装の際、少し離れたところに、それまで展示する場所がなかった近代・現代美術コレクションの建物を新設した。そばにあった市営プールを新館に接続し、特別展会場にした。旧館と新館の間には小さな運河が流れている。改装計画をコンペで勝ち取ったスイス人建築家のデザインは、新館と旧館を地下の回廊でつなぎ、その上を運河が流れる、という独創的なものだ。
今回の改装で、コルマール出身の画家・銅版画家、マルティン・ショーンガウアー(1445-91)の展示室ができた。デューラーが師と仰ぐほど、生前から名版画家として名をはせていた。作風は優雅である。ショーンガウアーとその周囲の画家たちによる祭壇画『神殿奉献』は、ヨセフとマリアがイエスを連れて、ユダヤの律法に従い、神殿に2羽の鳩を持って奉献に行く場面。イエスを抱く老シメオンと、鳩を捧げる少女の衣装の描写に華がある。
コルマールに来たからには、マティアス・グリューネヴァルト(1475頃-1528)の『イーゼンハイムの祭壇画』を見ずに帰ることはできない。何度見ても謎が多い不思議な絵だ。受胎告知、十字架にかかった血だらけのキリスト、そして復活した、SF映画のような虹色に輝くキリスト。絵の上のほうは高くて見にくい。細部までじっくり見たい人は、上階の視聴覚室で拡大版をどうぞ。
改装のハイライトは、近代・現代絵画の部だ。印象派から現代まで、これだけで独立した美術館である。ギュスターヴ・モローだ、と思って名前を見ると、弟子のジョルジュ・ルオーだったりと、美術愛好家でも作者を見破ることができない作品がいくつもある。
美術館を出て、凝った彫刻が施された裕福な商人の家が並ぶ中心街を歩き、小ヴェネティアと呼ばれる川のほとりまで歩く。木々の緑が水に映え、気持ちがなごむ風景だ。きれいなお菓子の店、市場にある地元産チーズの店、アルザスワインの店など、食通好みの店が豊富なので、ホテルに持ち帰って簡単にうまい食事ができる。旅行者にアパートメントホテルが人気というのがわかる。(羽)
INFORMATIONS
■ 交通
パリから国鉄の直通またはストラスブール乗り換えでColmar まで3時間半。
■ Musée Unterlinden
Place Unterlinden 68000 Colmar
駅から徒歩15分。
www.musee-unterlinden.com
入場料:一般13€ 10h-18h(木-20h) 火休
■ Restaurant L’Arpège
24 rue des Marchands 68000 Colmar
地元の人が勧めるビオと産直野菜のフランス料理店。フルコースランチ15-17€。テラスあり。