上の階は、表の通りから入る玄関ホール、それに寝室とサロン。
玄関のドアの脇にマントと帽子が掛けられている。この木製のマント掛けもフジタが作ったもので、 家中の棚や吊り戸棚もすべて彼の自作だという。
壁際に大きな暖炉があり、その白い覆いのパネルに子どもたちのシルエットが描かれている。サロンにも暖炉があって、こちらは綱引きの情景が4コマ漫画のように表現されている。下にはこの家が小さく描かれています。じつはこれまでフジタの絵は好きじゃなかったのだけれど、これを見てすっかり気に入ってしまった。
子どもが好きだったフジタは、家の前を通る子どもたちを招き入れるのを楽しみにしていたという。子どもたちの動きを生き生きと表現したこの綱引きの図を見ると、そんなフジタの人柄が見えてきます。
サロンと寝室の間に置かれた赤い縁取りのある屏風もフジタの手作りです。型紙(ポショワール)による絵の周りに、ブリキで作ったブローチ状のレリーフがたくさん貼られている。ネコや小鳥、女性の手や脚、傘など、これも見飽きない。
かつて寝室の壁には無数の作品が並んでいたという。今はベッドの上に4体のアンティーク人形が置かれている。棚にある16世紀の聖母子像、ベルギーのワッフルの型など、この家には旅先やパリの蚤の市で集めたものも多い。フジタは蚤の市を回るのが好きで、パリではよく君代さんと蚤の市を見て歩いたという。
60年代の家具が置かれたサロンの蓄音機に、美空ひばりのレコードがあった。フジタはアズナブールと浪花節が好きだったらしい。