在仏のカタロニア人画家、アントニー・タウレ(1945-)の個展がパリの3カ所で開かれている。少年時代から絵を描いていたが、父の希望で建築を学び、バルセロナで建築士の資格を得た。アメリカ、スペイン、フランスで建築の仕事をした後、1975年から絵画に専念し、現在に至っている。70年代から絵のための材料として撮り始めた写真は、しだいに独立した作品となった。今回の展覧会では、絵画、写真、リトグラフが展示されている。
題材はほぼすべて建物の内部だ。外界の光が内に入り込み、一部を照らしたり、空間を満たしたりしている。入口には扉がない。床と外は続いているかのように境目がない。主役は光ではないかと思うほど、光の存在感が大きい。神秘的でありながら宗教性は薄い。そして異常に静かである。内部の床は透明に光っており、光なのか、水なのかわからない。 ギャルリー・ボアで展示されている、8本の柱が天井を支えている作品やインドの建物の作品では、外の光が水となって中に入り込んでいるかのようだ。シュルレアリスム的ではあるが、そうとは言い切れないものがある。人物が後ろ向きに立っている作品からはカスパー・ダヴィッド・フリードリッヒが、建物と光の扱いからはエドワード・ホッパーが想起される。
この建物の中に入ったら、どんな気持ちがするだろうか。そんなことを思わせる不思議な世界だ。(羽)
3月25日まで。無料。
▪︎Instituto Cervantes
7 rue Quentin Bauchart 8e
▪︎Photo 12 Galerie (3月26日まで)
14 rue des jardins Saint-Paul 4e
▪︎Galerie Boa
11 rue d’Artois 8e