よくぞ企画したと思う、死についての展覧会である。もっと楽しいものを見たいと思う人は多いだろうが、1715年9月1日に死んだルイ14世(1638-1715)の没後300年を記念した、ヴェルサイユ宮殿でなければできない豪華なものだ。フランス人でも知らない、驚愕の歴史的事実も学べる。わざわざヴェルサイユまで足を延ばして見てほしい、この冬お勧めの展覧会の一つである。
リュリの宮廷音楽に迎えられて、黒いじゅうたんを敷いた階段を上ると、黒と白のカーテンが吊るされ、大きな金の王冠を骸骨が支える絢爛たるバロック的な装置に度肝を抜かれる。遺体が王家の霊廟であるサンドニ大聖堂にたどりついた9月9日から10月23日の葬儀の日まで、42日間サンドニ大聖堂に置かれたルイ14世の遺体安置所を当時の資料を元に再現したものだ。
劇的要素が強い演出だが、会場をずっと見て行くと、王の死後、驚くべき儀式がいくつも行われ、全体で一大スペクタクルを成していることがわかる。
死の翌日には、中世からの伝統に従い、遺体が解剖され、体と心臓と内臓の3つに分けられた。遺体を複数の場所に埋葬するためのプラグマティックな措置である。内臓を除いた体は塩やハーブを詰めて鉛の棺と木の棺に、内臓は鉛の桶に、心臓は香りを付けて鉛と金の箱と鉛の箱に入れて封印された。会場にはこの時代の解剖に使われたノコギリなどの道具や、イラストが並ぶ。
死んだ王は、全国民が見ることができた。当時のヨーロッパの王族の習慣では遺体をそのまま見せるか、王に似せた人形を見せるかのどちらかだった。ルイ14世の場合、遺体が見られたのは死の当日のみで、あとは宮殿の別の部屋で棺だけが8日間一般公開された。会場には、一般公開の間の模型がある。
その後はヴェルサイユからサンドニまで、夜を徹して音楽を鳴らしながら遺体を運ぶ葬列が続いた。1万人ものパリ住民がこれに参列したという。この時の様子は多くの版画に残されている。娯楽が少なかった時代、王の葬列を見物するのは一大娯楽で、それだけに人々の記憶に強く残ったに違いない。
当時の喪服も展示され、マリー・ド・メディシスのときからフランスでは喪服が黒になった事実が明らかにされている。次々と発見がある、驚きの展覧会だ。(羽)2月21日まで。月休。
ヴェルサイユ宮殿
RER C : Versailles-Château-Rive-Gauche駅徒歩10分