会期残り少ないが、時間をやりくりして見に行く価値がある展覧会だ。エルサレムで生まれ、思春期をニューヨークで過ごしたベルリン在住のオメール・ファスト (1972ー)は、テート・モダン、ドクメンタ13などで紹介された実力のあるビデオ作家だが、フランスの公立美術館でまとまって紹介されるのは今回が初めて。
始めも終わりもなく、いつのまにか最初に見た場面に戻るContinuity(Diptych)と5000 Feet is the Bestは、輪のような構成だ。プロの俳優を使った、物語があるフィクションだが、劇場公開される映画とは違い、起承転結がない。かといって実験映画でもなく、ジャンルに入れることが難しい作品だ。
Continuityは、息子が兵士としてアフガニスタンに行ったドイツ人家庭を舞台に、帰還した息子を迎える両親と息子の精神風景と家族の危機、戦争が作り出す傷を、息子役の俳優を何回も換えて描いている。5000 Feet is the Bestは、空爆で誤爆したことがトラウマになっている元兵士にホテルの一室でインタビューする形をとっている。元兵士が淡々と語る話と彼がインタビューの合間に見せる疲労との隔たりの大きさから、戦争の不条理さが浮かび出る。CNNニュースキャスターの言葉をパッチワークのようにつないだCNN Concatenatedには、ニュース番組から思いがけないものが見えてくる仕掛けが施されている。どれも傑作。(羽)
1/24まで 月休
Jeu de Paume:1 place de la Concorde 8e