フランスは柔道指導者の育成に早くから意欲的
フランス柔道連盟副会長・ボルドー大学教授 ミッシェル・ブルースさん
―フランスと日本の柔道に違いはありますか。
基本的に大きな違いはありません。私たちは日本の伝統に深い敬意の念を抱いているのです。しかし教え方が違います。フランスでは子供の柔道人口が高いのですが、柔道の時間に子供たちに遊んでもらうことを嫌がりません。「まずは楽しんで」という思いがあるのです。
―両国のメンタリティーの違いが出ているようですね。
フランスは会社でも上司との関係が、友情やシンプルさの中にあることが多いでしょう。日本の指導者には素晴らしい人もいますが、保守的で厳しい人もいます。時として十分な段階を踏まず、コンペティションへと急がせます。日本で柔道の事故が問題になりましたが、危険なのは柔道ではなく悪い指導なのです。フランスでは特に子供に対して、すぐにテクニックに走らせることを望みません。
―フランスは指導者養成に力を入れていますか。
フランスは国をあげスポーツを奨励していますが、柔道界は早くから指導者育成に意欲的でした。1955年に指導者のディプロム(資格認定証明書)が制定されたのです。指導者はディプロムがないと指導できません。一方日本では、指導者のディプロムの取得は義務ではありません。しかし現在、日本も指導者養成に努力をしています。私は、日本の柔道協会の副会長で金メダリストの山下泰裕さんや、宗岡会長に信頼を寄せています。日本の柔道界で続いた不祥事は、まもなく過去の思い出となることでしょう。
―民間の道場が活発に見えますが。
柔道の指導が職業として成り立っていることが大きいと思います。月会費を払えば通える民間の道場が、フランス各地に存在します。日本では高校や大学、会社や警察の中で行うことが多いのですが、民間の道場は少なめです。また日本では柔術は気高いものであり、お金儲けとは切り離して考えられがち。そのため柔道を無料奉仕で教える人も多いのです。(聞き手:瑞)