ボルドーの大学で入学者を一部くじ引きで決めたというニュースを聞いて驚いた。だが、これはボルドーばかりでなく全国的な近年の傾向で、今年は14の大学が一部の学部でくじ引きをしたという(昨年は6大学)。バカロレア試験にさえ合格すれば、希望する学部に入学できるという原則はもはや絵に描いた餅なのだろうか。
高等教育省は9月16日、今年の大学入学者は前年より6万5千人増えて約30万人と発表した。2013、14年とも3万人ずつ増え、増加は止まらない。今年のバカロレア合格者数は増加していないので、大学進学者が増えたということになる。高等教育機関の中でもエンジニア学校、商業学校など専門教育機関は学費が高いので、この不況のなか学費の安い大学を選ぶ若者が増えている上、学位を獲得して就職難を乗り切ろうという若者の思惑が反映されているようだ。
ところが、緊縮財政のために高等教育の予算は頭打ち。大学を新設・拡張するどころか統合が進められており、増加する学生を受け入れる態勢は整っていない。大学は定員オーバーした学生を受け入れなければならず、講義には立ち見も出るという。
大学への進学は高校3年時に「バカロレア後の入学許可(APB)」というシステムでインターネット出願する。希望大学・学部を優先順位付きで36件まで出願でき、高校の成績などをもとに6月末に振り分けられる。第一希望の55%が法学部、スポーツ技術科学、心理学、医学部に集中するので、いい成績でないと上位希望をかなえられないし、受け入れ先ゼロという事態もままある。7月に大学が決まらない人が7500人、第2、第3ラウンドを経てやっと9月半ばにはほぼ決まるが、本来の希望とは違う学部や大学に入らざるを得ない学生は多い。
そうして大学1年生になっても、約半分は2年生に進級できない。留年や次年度に進路変更する人、完全にドロップアウトする人もいる。しっかり勉強しないと3年で学士号は取れないのだ。さらに、学位を取っても就職難が待っている。ある調査によると、2014年に高等教育5年(Bac+5、大学なら修士号)以上の学位を持つ人が学位取得後1年以内に就職した割合は62%で2010年の72%から大きく後退。無期限正規雇用(CDI)は50%と前年比で9ポイント減。給与中間値も下がっている。エリート専門学校に比べると大学出身者は不利だ。大学は過密状態、学生生活も経済的にきつい上に就職難と、大学生には受難の時代だ。(し)