ルノーの元ショールームで文化が脈打っている。
ルマンの産業といえば、1920年に最初の工場が造られたルノーが中心だった。1970年代には、1万2千人が働いていたが、現在もルノー・日産社の車体製造工場があるが、従業員数は4分の1に減ったという。ルノーの元部品工場で、後にショールームとなった建物が、今は〈La Fonderie〉という文化センターになっている。演劇とコンテンポラリーダンスの公演が主なプログラムだ。「私のようにダンスの企画を持ち込むと、公演にたどり着くまで、リハーサルをやらせてもらったり、さまざまなアドバイスをもらったりと、大いに助けてもらっています。外からやってきて公演する人たち用の宿泊施設が2階にあるんですよ」と語るのは、根っからルマンっ子でダンサーのカロルさん。〈La Fonderie〉は、ルノー中心の町から、文化で新たな町おこしを図ろうとしているルマンを象徴しているかのようだ。毎月第一土曜日の午前中は一般にも公開され、家族連れなども訪れて、現代音楽に親しんだり、公演中の出しものの一部を見たり聞いたりできるようになっている。
カロルさんがお昼ならと紹介してくれたのが〈L’Epicerie du Pré〉。以前「Balade Gourmande」でルマンに出かけた時に、すでにとり上げたビオレストランだ。中に入ったとたん、ボクらを、もうずっと常連のように暖かく迎えてくれる。まずルマン名物のリエットをとって乾杯。「本日の一品」というアンディーブのハム巻きグラタンや長ネギとヤギ乳チーズのタルトをとった。どちらもシンプルな料理だが、心が入っているから味がしっかりしている。外は雨、店の奥では、誰かが弾くフォーク風のギター…。棚に30種類以上の蒸留酒が並んでいたのが忘れられず、午後10時過ぎに戻った。まず地ビールでのどをうるおしてから、お店の人がおすすめのコルミエという実から作られたものなど3種類の蒸留酒に挑戦。それぞれ味わいに微妙な違いがあって感心。カウンターでは3人の若者が、食後酒全制覇を目指してがんばっているようだ。元気が出てきた。雨にぬれながら、Rue du Portにあるパブ〈Le Zoo〉まで足を延ばした。店内にはオーティスの『ドック・オブ・ザ.ベイ』が流れ、酔っぱらったおじさんが楽しそうに踊っていた。
翌朝は、大聖堂前に立つ朝市へ。近郊から持ち込まれた野菜や果物は、形は少々いびつだがおいしそう。花屋も多く安いので、TGVで帰るというのに、ツバキの鉢植えを買ってしまった。
大聖堂をのぞいては、あんまり有名な美術館や博物館がないルマンは、逆にゆっくり散歩ができるし、落ち着いて飲むことができる店さえ見つければ、週末いっぱい楽しめる。旧市街にライラックやフジが花盛りになる頃、戻って来たい!(真)
〈La Fonderie〉で毎月第一土曜の11h〜12h、「La fièvre du samedi matin」。
まずはカフェテリアでコーヒーを飲んだりおしゃべりしたり和気あいあい。その後に、チェロによる現代音楽に触れることができた。
2 rue de la Fonderie
02.4324 .9360
www.lafonderie.fr/