インドは年間1200~1600本もの映画を産出する映画大国。とりわけ華やかな舞踏と音楽が満載のボリウッド・ムービーの印象が強烈だろう。だが専門家によると、03年頃から独自の映画作りを志す若い監督群が育ってきているという。昨年はフランスでも、配達された弁当を通して孤独な男女の心の交流を描いた『めぐり逢わせのお弁当』が48万人の観客を集めたように、新しいインド映画の波が着実に広がっている。
今月パリで開催の「Extravagant India !」は、そんな新世代のインド映画発掘と紹介に尽力する映画祭。2回目の開催となる今年は、フランス未公開作を中心に25本を上映する。長編フィクションのコンペティション部門には、米アカデミーのインド代表で有名女優ギートゥ・モーハンダースの初監督作『Liar’s Dice』や、「斬新なインド映画」と激賞されるサンジーブ・グプタの不可思議な人間ドラマ『Q』など9本を選出。ドキュメンタリー部門には、13歳で結婚を強制されて家に軟禁され続けた女性が、やがて素晴らしい詩人となる様を描くキム・ロンギノットの『Salma』など、インド社会の深層部分に触れる良作が並ぶ。短編のコンペ部門には、『めぐり逢わせのお弁当』のリテシュ・バトラ監督が、同作の世界的成功の後、初心に戻り手がけた『Masterchef』や、独学の女性アニメ作家ギタンジャリ・ラオによるボンベイの音と香りが感じられる映像詩『True love story』などが必見だろう。
コンペ外上映のシルパ・ラーナデー監督のアニメ『The World of Goopi and Bagha』は、インド映画史上に輝く巨星サタジット・レイが執筆した児童小説の映画化。私たちが慣れ親しむ日本やアメリカのアニメとは一味違う、色彩とポエジーに溢れた純インド産アニメだとか。本映画祭のディレクター、ガブリエル・ブレネン氏は「子供にも大人にも新鮮な映画体験を約束する」と胸を張る。
この貴重な機会に、新しいインド映画の息吹をスクリーンから存分に吸い込んでほしい。(瑞)
●第2回インド映画祭「Extravagant India !」
3月4日~10日迄、Gaumont Champs-Elysées Marignan (27 av. des Champs-Elysées 8e)で開催