推理小説の主人公は料理がうまい!

 料理本*も出しているパトリシア・コーンウェルが描く検死官ケイ・スカーペッタは、疲労困憊の時でも、めいのルーシーや太っちょの警部マリーノに得意の料理を作ってあげる。「マリーノはテーブルにつき、私は料理を続けた。赤ピーマンをスライスし、オリーブオイルでいためたみじん切りたまねぎにそれを加える」。それにマリーノがちゃちゃを入れる。「死体を切り刻むのはやめて、レストランでも開いたらどうだい」(相原真理子訳)。
 ロバート・B・パーカーは、男も惚れ込む、スペンサーというボストンの私立探偵を生み出した。タフな体と精神を保つための食欲は圧倒的だが、友人や恋人のスーザンのために料理する時の優しい心、みごとな手際! ラム・カツレツを作り始める。「ジャガイモが平均して茶色になると、ふたをして火を弱くし、充分に火を通した。カツレツが茶色になると、油をこぼしてシャブリと新鮮なハッカを加え、ふたをして火を通した。スーザンが、二人分の酒を新たに注ぐために、一度だけ台所へ来た」(菊地光訳)。いい雰囲気!  白ワインとハッカの香りを吸ったカツレツのおいしそうなこと!  こんな男を愛する精神科医スーザンは、聡明(そうめい)な上に、「きみはおれが知るなかで最高の美人だ」とスペンサーが言い切っている。
 クルジェットの揚げ物の衣にビールを加えるということを学んだのも、このスペンサー探偵のおかげです。サンキュー!(真)
*『パトリシア・コーンウェルの食卓』(講談社)