日常のさまざまな会話の中で「Quiproquot キプロコ」、という言葉を耳にする。たとえば「この人だ」と教わった人が実は人違いだったとか、約束の時間に現れない友人に腹を立てるが実は日付けを間違えていたとかなど、思い違い、人違い、という状況を一言でキプロコだったのだ、という風に使われる 。
ジョルジュ・フェドーが1888年に初演したこの戯曲には、こんなキプロコだらけ、観劇する私たちすら「ちょっとしっかりしてよー!」と激励したくなるほど、登場人物たちは思い違い、人違いのために右往左往させられる。
キプロコその1。地方から上京した3人の兄弟姉妹が、職安と結婚相談所が同居する建物で、職安窓口で結婚相談をし、精神科医の家庭を紹介される。
キプロコその2。3人の兄弟姉妹は、結婚を前提に精神科医の家に現れるが、医者は彼らを職安に頼んで斡旋してもらった召使いとして取り扱う。
キプロコその3。3人の兄弟姉妹が召使いではなく、精神病院から逃げ出した患者だったのだと医者は勘違いし、彼らを病院へと送り込む。
加えて色男の精神科医は、キャバレーで見そめた踊り子にも結婚を約束し、婚約者や家族には「哀れな患者」と紹介しているので、話はますます混乱する。ただこれらの思い違い、勘違い、人違いが重なっても、決してドタバタせず、踊りと歌を交えながら優雅に場面展開をしていくのがフェドー流。登場人物たちはいずれも甲乙つけがたく、どこまでも軽やかで、夏の暑さを忘れるのにぴったり。緩急のつけかたが絶妙な演出(作曲も)はエルヴェ・ドヴォルデールによるもの。(海)
火 – 土21h。 10€- 45€。
Théâtre du Palais Royal : 38 rue du Montpensier 1er 01.4297.4000
http://theatrepalaisroyal.com/