公開後6週間を過ぎている『Qu’est-ce qu’on a fait au bon dieu ? 』をあえて今さらここで取り上げるのは、この映画が4週間で動員670万人を超えてヒット街道をばく進、今や国民映画の様相を帯びてきたからだ。ロワール河沿いのシャトーに住む典型的ブルジョワ、ヴェルヌイユ家の四姉妹、長女はアラブ人、次女はユダヤ人、三女は中国人と結婚、毎度ぐっと我慢して式に臨む、表面は良識派の両親(クリスチャン・クラヴィエとシャンタル・ロービー)。二人はせめて末娘だけはカトリック教会で式を挙げて欲しいと期待を寄せる。果たして末娘はカトリック教徒と結婚することになるのだが、彼はアフリカ人だった。最後まで抵抗する父親、一方、彼の方の父もフランスを毛嫌いしている。いがみ合う花嫁の父と花婿の父…。その間、人種、宗教、文化の違う婿たちは…?
なんとも図式的でご都合主義な話の作りではあるが、この映画、大ヒットしてるだけあって非常にウェル・メイドで楽しく笑える。騙されたと思って試しに観に行って欲しい。クリシェだらけの中で自分とは異なる相手を容認してゆく過程は理想主義的ではあるものの、こんな大衆喜劇への国民的共感から偏見という垣根が少しづつ崩壊してゆくことを願う筆者も理想主義者か。なんか最後は、多様な人種や宗教が入り交じって成立しているフランス社会に万歳したくなった。自身もカトリック・ブルジョワ出身という監督のフィリップ・ドゥ・ショーヴロンは「フランスのカップルの20%が混合カップルで、ヨーロッパ他国の平均3%を遙かに超えていることから映画を着想した」と語っている。(吉)