世界中に手話を使う人は4500万人いて、126の異なった手話言語が存在するという。所変われば話す言葉だけでなく、手話も違ってくる。イギリスとアメリカの手話にも大きな違いがあるという。ビジュアルな手話は、話し言葉や書き言葉以上にその土地の歴史や習慣が大きく影響しているのだろう。
フランスでの手話の初まりは18世紀の半ばで、それまで聾唖(ろうあ)者は、社会の中で忘れられた存在だったという。ただし発明されたとはいえ、実際に手話が市民権を得るにはさらに2世紀近く待たなければならなかった。
1970年代半ばパリの郊外ヴァンセンヌに〈フランス手話アカデミー〉が、そして同じ時期に手話で劇を演ずるカンパニー〈International Visual Théâtre〉 が創設された。このカンパニーは2007年からパリの9区に劇場を持ち、手話を使った劇やマイム、パフォーマンスなどの公演、手話講座、ワークショップの開催、手話を学ぶための本やDVDの出版などを行っている。
手話を使った劇というのは? と、興味しんしんで観に行った『Une sacrée boucherie すごい肉屋』という劇では、役者たち全員が手話を使って演技をし、吹き替えで台詞が入る。役者たちは、話し言葉のように声で抑揚を出せないということもあるのか普通よりもさらに表現豊かに演技している印象を受ける。手話って美しい言葉だな、習ってみたいなぁ…と思ったけれど、フランス語の手話は日本では使えない。エスペラント語のように世界共通手話が登場すればいいのに…。
12日から22日まで『Froid dans le dos ぞっとさせられる』というおとぎ話風の劇が上演される。子連れで手話に開眼するよい機会かもしれない。(海)
IVT-International Visual Theatre :
7 cité Chaptal 9e 01.5316.1818
www.ivt.fr