下欄の「デュマ、食の物語」で、この大作家のポトフに寄せる情熱が書かれている。そこでボクらも負けずにポトフ作り。デュマの言うとおりポトフはブイヨン、というわけで3年前のスープ特集でも取り上げています。
牛肉は、ゼラチン質や脂身が適度に混じった肩肉macreuse/paleronやスネ肉gîteなど、好みのところを、残ってもおいしいので1キロ半買ってくる。肉屋は真ん中に髄の入った骨も付けてくれるはずだ。肉の塊と骨をまとめて結わえる。デュマは「7時間沸騰させておく」というけれど、ボクらは圧力鍋を使って時間短縮。肉を水が冷たいうちから入れるか、一度沸騰してから入れるかで論争が絶えないが、でき上がりにほとんど違いはない、というのがボクの意見です。そこで、肉を鍋に入れ、ヒタヒタに水を張って火にかける。沸騰してきたら丹念にアクをとるのが、澄んだスープを作るコツだ。セロリも入っているブーケ・ガルニ、丁字を1本か2本刺したタマネギ1個、塩大さじ1杯半、コショウ20粒を加え、フタをして圧力をかける。シュッシュッと湯気が出始めたら火を弱火に落とし、1時間煮ていく。ふつうの鍋なら2時間半です。ここで蒸気を抜いてフタを開ける。
ニンジンとカブを丸ごとか大きく切り分けて加える。ネギの白いところ6本分は結わえてから加える。また圧力をかけて煮てもいいが、野菜の煮加減が心配なら、フタをして圧力をかけずに煮ていくといいだろう。1時間ちょっとすると、野菜は柔らかくなっている。塩とコショウで味を調える。ジャガイモは煮くずれしてブイヨンを濁らせてしまうので、別にゆで上げてから、最後に加える方が無難だ。
ポトフの味わい方も好き好きだが、最初に肉と野菜のうま味が一つに溶け合ったブイヨンをふ〜ふ〜いいながら味わうのがいい。次は湯気を立てている肉と野菜。肉は適当な大きさに切り分ける。マスタードや粗塩を添えたい。骨の髄はパンにのせ、粗塩を振って味わうと絶品!
ワインは、ジュリエナスJuliénasとか、ボージョレの赤がいい。(真)
煮込み用牛肉1キロ半、ニンジン5本、カブ6個、長ネギ5本、タマネギ1個、ジャガイモ7、8個、セロリ入りブーケ・ガルニ、丁字1本か2本、塩、コショウ
●miroton
ポトフの残り肉にはいろいろな使いみちがあるから、肉が500グラムくらい残るように、たっぷりと作ることをおすすめしたい。その肉を薄く切ってからサンドイッチに挟み込んでもいいし、トマト風味のソースで煮込んでもいい。挽いてからマッシュポテトで覆ってオーブンで焼いたアシ・パルマンチエもうまい。今回は、まだ紹介したことがなかったバルザック好物のミロトンに挑戦。。
肉500グラムを薄く切り分けてからせん切りにする。タマネギ4個は薄くせん切りにしてから、たっぷりのバターで炒める。軽く色がついてきたら小麦粉を大さじ1杯振りかける。木のヘラで混ぜ合わせながらしばらく炒めたら、白ワインを大さじ2杯、そして全体がピュレ状になるまでポトフのスープを少しずつ加えていく。ポトフのスープがなかったら、水でもOK。ぐつぐつっと沸騰してきたら軽く塩、コショウして、火を止める。
この辺でオーブンの目盛りを180度に合わせて点火しておく。
あんまり大きくないオーブン皿にバターを塗り、薄く小口に切ったコルニションを散らし、肉を広げる。それをタマネギのピュレで覆い、パン粉をたっぷりと振りかけ、バターの小さな塊をいくつかのせて、熱くなっているオーブンへ。きれいな焼き色がついたら、きざんだパセリを散らして熱々を食卓へ。
●圧力鍋autocuiseur(cocotte minute)
圧力鍋に食材を入れて水を加えたら、フタをできるだけきっちりと閉める。
これはかなり力のいる仕事です。圧力調節弁soupapeをはめたら、最初は強火にかけ、圧力調節弁からシュッシュッと蒸気が出始めたら、ごく弱火にする。途中で圧力調節弁から蒸気が出なくなるようなら、鍋内の圧力が下がっていることなので、火をやや強くする。強く蒸気が出っぱなしなら、圧力が強すぎることなので、火を弱くする。調理時間は圧力調節弁から蒸気が出始めてから数えます。調理時間が終わったら、圧力調節弁を一気に抜くことが大切。1分ほど立って蒸気が出なくなったら、鍋内の圧力が下がったことなので、フタを開ける。この時に熱い蒸気が吹き出ることもあるので気をつけること。調理時間は、鍋にどれだけ圧力がかけられるかで変わるが、1/2から1/3に短縮できる。