「最初にこの朝鮮アザミのつぼみを食べようとした人は、よほど飢えていたか、味への好奇心があった人に違いない」と前号で書いた。そしたら、おそれをなして一度もアルティショーを調理したことがない読者が多いと思う、というスタッフの声。アルティショーは6月くらいから9月いっぱいがシーズン。そこで一番シンプルに、塩ゆでしてからビネグレットソースを添える一品を紹介。
八百屋でブルターニュ産でカミュと呼ばれる大きなアルティショーを求めるのだが、緑色が鮮やかで、フイユfeuille(葉)という部分がしっかり締まっていて、手に持ってみて重たいものを、4人なら4個買ってくる。
ざーざーと水洗いしてから、茎を根もとでポキリと折りとり、切り口が黒く変色しないようにレモンの汁をすりこんでおく。いちばん外側の固い葉を取りのぞき、ゆでる時、盛り付ける時にあまりかさばらないように、葉先の1/4くらいを切り取るといいだろう。もちろん、それが面倒な人はそのままでもかまわない。大鍋に水4リットル、塩大さじ4杯、酢大さじ4杯を加え、火にかけ沸騰してきたらアルティショーを入れる。再沸騰したら弱火に落とし、ことことことこととゆでていく。ゆで時間は大きさによるけれど、だいたい30分から40分くらいが目安。葉が抵抗なくむけるようになったらゆで上がり。時間がない時は圧力鍋を使ってもいい。しゅっしゅっと湯気が出てきたら火を弱くすること。10分ちょっとでゆで上がる。
ゆでている間にビネグレットソースを準備するといい(左下のコラム参照)。
ゆで上がったアルティショーは、ざるにとって水気を切り、中の水気が出るように葉先を下にして冷ますのだが、まだちょっと温かいという時がいちばんうまい。葉先を上にして食卓に出す。一枚一枚葉をむしりとっては、その付け根をソースにつけながら食べていくと、おいしいフォンfond(花托)が現れてくる。どこかクワイに似た味がなつかしい。ビネグレットソースのかわりに、ヨーグルトに、レモンの搾り汁と塩、コショウ少々を加えたソースも合う。初夏らしいアントレです。(真)
大きなアルティショー4個、塩、酢+ビネグレットソース
●ビネグレットソースの作り方
サラダに一番よく使われるドレッシングが、ビネグレットソース。まずベーシックなビネグレットの作り方を覚えることにしよう。5、6人分くらいのサラダ用の分量です。
1)ボウルにワインビネガーを大さじ1杯とり、塩ひとつまみを加え、泡立器で勢いよく混ぜ合わせる。
2)塩がすっかり溶けたら(油を先に入れてしまうと塩が溶けなくなるので要注意)、相変わらず泡立器を使いながら、油を大さじ3杯混ぜ入れる。最後に好みの量のコショウを挽き入れる。
今回のゆでアルティショーにはマスタードが合う。塩と同時にマスタードをビネガーに加えるといい。この分量だと小さじ1杯で十分だ。柔らかいビネグレットにしたい時は、油と液状生クリームを半々にするといい。またビネガーのかわりにレモンの搾り汁を使う時は、酸味が強いので、レモンの搾り汁大さじ1杯に対し、大さじ4杯の油を入れること。ビネグレットソースは冷蔵庫で保存すれば1週間くらいは大丈夫。多めに作って、きちんと栓ができる瓶に入れておくと、その度に作らなくていいので便利です。ただし使用前にはよく振ります。
●artichaut
シチリア島が原産といわれているアルティショー。今でもイタリア人が大好きな野菜の一つ。フランスでは16世紀に、これが大好物だったカトリーヌ・ド・メディシスがその栽培を奨励した。肝臓の働きを助け、利尿効果もある。
食べるところは、葉feuilleと呼ばれる部分のつけ根と、その葉に包まれている、杯の形をしている花托fondの部分だ。花托の上に付いている、繊毛foinはちくちくしていて食べられない。丁寧にスプーンなどを使ってとり除くこと。生のままとり出した花托は、切り分けてからオリーブ油で炒めるとうまい。南仏産の、ふつう葉と一緒に結わえられているヴィオレvioletという小さいアルティショーの花托は、薄く切って塩の華に付けて食べると、こりこりっとしてうまい!
●花托fondのとり出し方
茎を折りとる。次に全体の1/3くらいのところに包丁を入れて、ザクリと先を切り落とす。葉をあらかた手でむしり取ったら、よく切れるプティナイフで、ジャガイモなどを面どりする要領で残りの葉を切り取る。最後にチクチクする繊毛をえぐるようにしてとりのぞく。酸化して黒くならないように、調理するまで薄いレモン水に漬けておく。
●アルティショーのオリーブ油炒め
小振りで紫色がかり、5、6個が結わえられて売られているヴィオレを、4人分として2束、できたら3束買ってくる。花托を、上記のごとくとり出し、二つに切り分け、さっとレモン水を通す。布巾で水気を丁寧にぬぐう。フライパンにオリーブ油をとり、アルティショーを加えて、塩、コショウし、炒めていく。すぐに色がついたりしないように中弱火で、木のヘラで混ぜ合わせながら炒めていく。全体に焼き色がついてきたらでき上がり。歯ごたえが残っている方がうまい。子牛肉のソテーやオムレツに添えると、絶品。