デュマ、食の物語 2

 アレクサンドル・デュマの父にあたるトマは、フランスの貴族と植民地の黒人女性の間に生まれた混血児だった。デュマはこの父を英雄視して、そのりりしい容姿や驚くべき身体能力について得意げに紹介している。そんな父の血を受け継いだデュマも、運動神経が抜群。4歳の時に父親とは死別したものの、森林監視員をしていた従弟などの影響もあり、子供の頃から森へ通って狩りをしていたという。未来の文豪は、オオカミが出るような自然の中を駆け回り、ワイルドな少年時代を過ごした。文字の読み書きの前に、動物たちの足跡を「読む」ことを覚え、その動物の種類や大きさなどを判断できるような子供だったという。
 そんなデュマの代表作、フランス17世紀が舞台の歴史小説『三銃士』にも、狩りの様子がちょくちょく出てくる。「三銃士」のひとりであるポルトスの従者ムスクトンは、療養中の主人にうまいものを食べさせようと密猟・密漁にいそしむ。父親から猟を習ったというこのムスクトン、昔とったきねづかで「近所の王太子領の森を散歩しながら、ちょいちょい罠を伏せ」、「禁猟のお池のふちに寝っころがって、そっと釣り糸をなげこみ」、「鷓鴣(しゃこ)や兎、鯉、鰻といった病人の食物としてごくおよろしいような食料が、たえず手に入ります」(生島遼一訳)とひょうひょうと言い、敬愛する主人に獲物を届ける。
 一方、ルイ13世はサンジェルマン・アン・レーの森へと優雅に鹿狩りに出かけていく。この王様、「昨夜からシカが放してございます」という主猟官の言葉に誘われ、政治のことを後回しにして朝食後に猟に出かけてしまうような困ったところがあった。公式な場には、「瀟洒な狩猟服」を着て、やはり羽飾りのついた「狩猟の婦人服」を着た王妃と現れる。狩猟を楽しむことは、この時代の欧州の王侯貴族に許される、ある種の優雅なスポーツでもあった。(さ)

 

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