●『Des Abeilles et des Hommes』のマルクス・インホフ監督インタビュー
2007年頃から世界各地でミツバチの集団失踪が報告されている。「地球上でミツバチが消えてから、人類が生きられるのは4年」。60年前にアインシュタインが残した不穏な言葉について、立ち止まり、考える時期にきているだろう。公開中の映画『Des Abeilles et des Hommes』は、ミツバチを育て保護し、研究し、時には奴隷のように扱う人間たちを追ったドキュメンタリー。カメラ片手に世界4大陸を横断した、ドイツ在住のスイス人、マルクス・インホフ監督に話を聞いた。
ミツバチの集団失踪をテーマにしたのは?
私はもともとフィクション映画の監督ですが、祖父が養蜂家で、娘と娘婿はミツバチの研究家。集団失踪は身近な問題だったため、人々に真実を伝える必要性を感じたのです。失踪の理由は複雑。タマネギの皮のように、様々な要因が重なり合っています。ただし失踪そのものは、人類への警告とも考えられます。「炭坑のカナリア」のたとえを知っていますか? 炭坑で人間よりも先に毒ガスの危険を察知し、死んでいくカナリアのことです。ミツバチの失踪も似ています。
本国スイスでの映画の反応は?
人口790万人のスイスで25万人が鑑賞しました。フィクション映画も含め、昨年度のスイス映画で最大のヒット作となったのです。5年前には意識されなかった事態の深刻さが、映画のおかげで驚きをもって伝わっているのを感じます。農薬の使用に反対する嘆願書は、すでに世界で2百万人の署名を集めました。
撮影で大変だったことは?
ミツバチの撮影だけで3カ月かかったことです。ハチには演技が付けられませんから。特別なカメラで近寄って観察したミツバチの世界は、まるでSFのよう。でも『アバター』よりもキレイですよ。自然とは、動植物がみなそれぞれに音を奏でるオーケストラ。多様な音が合わさるからこそ、美しいハーモニーが響き渡るのです。人間だけが大きな音を出してはいけません。ミツバチが奏でる音楽にも、耳を傾けることが大事なのです。
(聞き手:瑞)