年末はなにかとパーティが多い。そんな時、薄く切り分けて出すローストビーフは、二人や三人、客が増えてもなんとかなるから便利。焼き時間にさえ気をつければ、作るのも簡単。柔らかく焼けるかどうかは肉質次第。trancheというモモ肉かランプrumsteckに、豚脂を巻いて糸で結わえたものが、肉屋の店頭に並んでいる。ノエルのぜい沢という人は、ヒレ肉filetにしたら文句なしだが、値段は倍はする。
焼き始める40分ほど前に、焼く時に肉があまり冷たくないように、冷蔵庫から出して室温に置いておくことが大切だ。この間にマッシュポテトなどの付け合わせを用意しておくといい。
オーブンの目盛りを220度に合わせて点火して十分に熱くなったら、肉のかたまりをオーブン用プレートに置いて入れる。まだ塩、コショウはしません。
焼き時間は最初の500グラムが15分、あとは500グラムごとに10分足していく。今回は1キロだから、合わせて25分になる。英国人のようにあまりレアでない方がいいというのなら、30分というところ。そこでまず15分。15分経ったら、いったんオーブンから出して、表面に焼き色がつくように、豚脂をはずしてから、またオーブンに戻す。あと10分だが、途中で一度引っくり返す。焼き上がったら全体に塩、コショウし、消したオーブンの扉を半開きのまま、肉汁が落ち着くようにもう5分ほど待たなくてはいけない。
ローストビーフを、肉汁がたまるようになっているまな板か、大皿の上でできるだけ薄く切り、食卓に出す皿に盛り付け、まだ温かいオーブンに戻す。オーブンプレートに出た脂を捨て、そこへ熱湯を大さじ5、6杯加え、木のヘラやハケを使って、底にこびりついているうま味を溶け込ませ、小鍋にとる。切る時に出た肉汁も加え、やや煮つめたら、塩とコショウで味を調え、冷たいバターを大さじ1杯加え、ソース入れにとる。マッシュポテトは電子レンジで温め直す。以上をローストビーフと一緒に食卓に出し、取り分ける。ワインは、ブルゴーニュの赤を奮発したい。(真)
4人分:ロースト用の牛肉1kg、バター、塩、コショウ
●牛肉
フランス人の食生活のベースともいってもおかしくないのが、牛肉。タルタルステーキ、ハンバーグステーキ、ステーキ、ローストビーフ、赤ワインやビ−ル煮、ポトフ…。肉屋では、牛肉が部位ごとに切り分けられて並んでいる。そこで、それぞれの料理に適した部位を教示。
タルタルステーキには柔らかいが脂身がほとんどないランプrumsteckがいい。ハンバーグステーキには、trancheなどの内また肉が使われることが多いが、挽き肉は傷みやすいので、目の前で肉屋が挽いたものを買ってくること。ステーキにはモモ肉やランプ、外ロースfaux-filet、脂身が入っているものが好きな人はリブロースentrecôte。少々歯ごたえがあるが肉風味が濃いアンプhampeやオングレonglet、バヴェットbavetteは、レアに焼いて味わいたい。煮込みには肩ロース(macreuseやpaleron)、上部背肉basse-côtes、すね肉gîteなどが用いられる。
フランスの肉牛で優れた品質が認められているものとしては、主に中央山地で飼育されているオーブラックAubrac種、リムザン地方が原産のリムジーヌlimousine種、ソーヌ・エ・ロワール県やロワール県を中心に飼育されているシャロレcharolais種など。
●ローストビーフが残ったら
ローストビーフが残るほど幸せなことはない。温め直すと固くなるから、冷めたままをできるだけ薄く切り分けたい。熱い時よりは簡単に薄く切れるものです。これを大皿いっぱいに並べて、ポテトサラダやミックスサラダ、ゆで卵などを添えれば立派な一食になる。マヨネーズやマスタードも忘れずに添える。
サンドイッチにするのもいい。パンはバゲットでも食パンでも田舎パンでも好きなものを選ぶ。パンの切り口にマヨネーズとマスタードを薄くぬってから、できるだけ薄く切ったローストビーフを二段、三段に重ね、やはり薄く切ったコルニション、トマトをのせてサンドイッチする。ボクはマスタードのかわりに、瓶入りになって市販されているおろしホースラディッシュraifortを塗ることにしている。どこか東欧風の味わいになる。