シャイヨー宮時代にくらべ5倍の入場者増! 2005年の再オープン以来、セルジュ・トゥビアナ館長指揮のもと、手堅い運営を続けるのがベルシーにあるシネマテーク。現在、マルセル・カルネの代表作で、フランス映画史の金字塔としてさんさんと輝く『天井桟敷の人々』の秘密に迫る展覧会が開催中。ポスター、デッサン、写真、衣装、直筆シナリオなど300点を一挙公開する。晩年映画界で四面楚歌(そか)となったカルネがアメリカに寄贈した貴重な資料も、時を経てフランスに買い戻され、パテ財団やプレヴェールの孫所蔵の資料と共に日の目を見た。「フュナンビュール座」の看板の再現や、「犯罪通り」ことタンプル大通りの資料を前に、オスマンの大改造時に失われた1830年代巴里の面影を想像するのも一興だ。
「映画は集団芸術」といわれるが、たいていは監督と俳優の仕事ばかりが注目されがち。だが本展示は、いかに個々の才能の融合が傑作へと昇華するかが如実に示され、作品の見方に一考を促す。本作は、実在した19世紀のパントマイム芸人ドビュローを演じたいという名優ジャン=ルイ・バローの熱意に、カルネと脚本のジャック・プレヴェールが応え企画がスタート。ここに『悪魔が夜来る』でもコンビを組んだ、ともにハンガリー出身のユダヤ人である美術監督アレクサンドル・トローネルと作曲家ジョゼフ・コズマ、そして衣装担当のマヨらが集結した。
撮影は1943年に開始。占領時代は中断の憂き目に遭いながらも撮影場所を変え、4カ月の予定が延びに延び、桁外れの大出費に製作は火の車。だが終戦直後に公開するやいなや、自由とレジスタンスの精神をまとって起死回生の大ヒット。「フランス文化ここにあり」と、名声は海を越え響き渡る。映画もまた、主人公たちに負けず劣らずドラマティックな運命をたどったのだった。幻となった第3部の構想や、アルレッティとドイツ人将校との道ならぬ恋があったことなど、興味深い裏話も発掘できる。(瑞)
Cinémathèque française : 51 rue de Bercy
12e M°Bercy www.cinematheque.fr
火休。土と日16hにガイドあり。
2013年1月27日迄。