そろそろキノコも終わりだが、先週末の朝市で、死のトランペット茸trompettes de la mortを見つけた。ちょっとキクラゲを思わせる真っ黒な外見のせいか、やや味が劣るせいか、値段はキロ16ユーロ前後で、ジロル茸やセープ茸の半額。肉の煮込みなどに入れると、その煮汁を吸って、なかなかのおいしさだ。さっそく400グラム買ってきた。そして肉は、晩秋になって脂がのってうまみが濃くなっているウサギ。一匹買って、鳥肉屋さんに八つほどに切り分けてもらう。頭とか肝臓ももらって帰ること。
まず野菜の準備。タマネギとニンニクをみじんに切り、トマトを湯むきしてからざくっざくっと切る。ブーケ・ガルニも用意する。
ココット鍋にオリーブ油をとり、塩、コショウしたウサギを中強火で炒め、表面にきれいな焼き色をつける。ここでタマネギとニンニクを入れ、ニンニクの香りがしたら、小麦粉を大さじ2杯、全体に振りかけて混ぜ合せる。この小麦粉が仕上がりにトロミを与えてくれるのだ。白ワインを半ボトル加え、さらに肉がかぶるくらいに水を張る。ここでいい味が出る頭も加える。沸騰してきたらトマトとブーケ・ガルニを入れ、弱火に落としてフタをし、1時間ほど煮込んでいく。煮上がる20分ほど前に肝臓も加える。
この間にキノコの準備。根元の固いところを切り、さっと水で洗ってざるにとってから、オリーブ油で炒める。強火。1分半ほど炒めていくと、しんなりして水気が出てくるから、キノコだけ皿に取り出しておく。
肉が柔らかくなったら、肝臓や頭と共に網しゃくしなどで取り出す。ブーケ・ガルニも取り除いたら、煮汁をタマネギやトマトごと、ハンドブレンダーで攪拌(かくはん)し、なめらかなソースにする。塩とコショウで味を調えてから、ウサギの肉を戻し、キノコも加え、弱火にかける。全体が熱くなったらでき上がり。付け合わせはマッシュポテトかタリアテッレ。
ワインはシャルドネ種のようなあまり辛口でない白か、コット・デュ・ローヌの赤。(真)
4〜6人分:ウサギ1匹、死のトランペット茸400g、
タマネギ2個、トマト中3個、ニンニク3片、Pブーケ・ガルニ、
白ワイン半ボトル、オリーブ油、小麦粉、塩、コショウ
●lapin
フランス人もウサギを切り分ける時は、肉屋(ふつう鳥肉屋 volailler)に頼んでいる。そうすると、頭têteを切りはずし、肝臓foieを取り出し、前肢patte、モモ肉cuisseを切りとり、胴体râbleを肉の付き具合が均等になるように三つくらいに切り分けてくれる。それも大きな包丁でバサッバサッとではなく、鋭利な中型の包丁で、関節の切れ目切れ目を切りはずすように切り分けてくれる。ウサギの骨をたたき割ると、切り口が鋭くとがって、食べるときに本当に危険!
ウサギ肉はトリ肉に似ているが、トリのように脂肪に富んだ皮がない。そこで、身がパサパサしないように、ベーコンやラードなどの脂で炒めてから、弱めの火加減でフタをし、じっくりと火を通すとうまい。味はかなり淡泊なので、エシャロット、タイム、ローズマリー、マスタード、ニンニクなどを組み合わせ、その香りや風味をうまく生かして調理することが大切。ウサギカレーもうまい。難しいのは調理時間。ウサギは柔らかく煮上げないとうまくないので、じっくり火を通していくのだが、油断して煮過ぎると肉が骨から離れてバラバラ死体になってしまう。万が一そうなったら、きちんと骨をとり除いてから食卓に。