アイルランドの西海岸で10日間過ごした。畑は少なく、至る所、牧草地が広がり、牛や羊が、のんびり草をはんでいる。その牛肉や子羊肉の柔らかさ、おいしさにびっくりしたが、今回は、その子羊肉を使ったアイリッシュシチューを作ってみよう。昨年も書いたが、今回は、ボクらが滞在した村のパブ〈モリーズ〉の女主人モリーさん直伝です。
子羊肉は「くび肉が一番うまい」とモリーさんは断言する。そこで肉屋に、くび肉を関節のところで切り分けてもらって1キロ半(キロ12ユーロくらい)買ってくる。外側の脂を丁寧にとりのぞく。
ジャガイモは皮をむいてから、7ミリほどの厚さに、縦長に輪切りにする。ジャガイモはせん切り、パセリはみじん切り。
大きめのココット鍋を用意し、まずジャガイモ1/3を敷く。その上に子羊肉1/2を重ならないように並べる。さらにその上にタマネギ1/2を広げ、塩、コショウ。ここで、パセリ半量とタイムの葉少々を振る。そしてもう一度同じ作業を繰り返し、最後に残り1/3のジャガイモで覆い、水を八分目に加える。こうすると下の方のジャガイモが煮くずれしてソースがこってりするし、上のジャガイモは食べごろの柔らかさ。「ボクはギネスと半々にするんですが」と言ったらモリーさんに「このシチューはシンプルが一番よ」とくぎを刺された。
このへんでオーブンの目盛りを180度に合わせて点火しておくが、最初は沸騰するまでココット鍋をガス火にかける。中火。沸騰したら熱くなっているオーブンに入れて少なくとも2時間の辛抱です。オーブンに入れることができない鍋ならば、沸騰したら弱火に落とし、しっかりふたをして、やはり2時間です。煮上がったら熱々を鍋ごと食卓に出す。アイルランド人の実直な優しさ、そのままの味で、いくら食べてもあきない。
飲み物はワインだったら、シノンなどロワール産の赤。でもアイルランドでは、ギネスや スミテックスなどのビールです。(真)
4人分:子羊のくび肉collier 1.5キロ、ジャガイモ1キロ、タマネギ600グラム、パセリ半束、タイム少々、塩。コショウ
●irish breakfast
ダブリン郊外のB&Bでも、西海岸ガルウェイのB&Bでも、朝は本格的なアイリッシュ風ブレックファーストだった。まずオレンジジュースとコーンフレークスやミューズリーなどのシリアル類が牛乳と一緒に出てくる。次に、ティーかコーヒーとともに、写真のような盛り合せの一皿が、パンやソーダパンも添えられて出てくる。手前から、焼いたダニッシュベーコン、目玉焼き、小さめのソーセージ、奥はハッシュドポテト、さっと焼かれたトマト、甘いトマト煮のベイクトビーンズ、ブラックプディングあるいはホワイトプディングと呼ばれるブダンを輪切りにして焼いたもの。すごいボリュームで、平らげるのに時間がかかる。アイルランド人にとっても、こんなフルコースの朝食は週末くらいで、ふだんはそのうちのいくつかをとるだけらしい。街のカフェでもこのブレックファーストを出しているが、とるものの数によって値段が変わることが多い。アイルランド人は、こんな朝食の後は、お昼はパブで、スープやサンドイッチで簡単に済ましている。でも、きちんとギネスは飲んでいます。
●ガルウェイのカキ
ガルウエイ湾はカキの名産地だから、街のパブでもカキを出していることが多い。味はフランス産に負けないうまさだが、値段もフランス並みで安くはない。そのカキもギネスを飲みながら食べている人が実に多い。「ギネスのまろやかな風味はカキと合う」というのがアイルランド風だ。
●soda bread
アイルランドでは、料理にソーダパンがついてくる。それも自家製。材料は、小麦粉、重炭酸ソーダ(重曹)、バターミルク、水、塩だけだから、誰でも簡単にできる。粉の種類によってブラウンだったり、やや白かったりする。まだ温かいソーダパンにバターを塗って味わう幸せ。スープにもよく合う。