女性たちが正当防衛手段に。

 『Les Femmes du Bus 678(678路線バスの女)』は性的虐待に苦しむ女性たちの物語。ファイザは朝晩の通勤が恐怖だ。超満員のバスで必ずといってよいほど痴漢行為にあうからだ。一方セバは、婚約者とサッカー観戦の帰途、勝利に熱狂する群衆の波にのみ込まれ暴行された。屈辱にさいなまれ彼女を顧みることができない婚約者と彼女は別れる。そして、日中街中で通りすがりのドライバーに悪戯されたネリーは犯人を告訴するも家族は「恥を知れ」と彼女に理解を示さない。これはエジプトの首都カイロを舞台にしているが、彼女たちの物語は、残念ながらそのまま日本社会に当てはまりそうだ。これは、禁欲的で男尊女卑的なイスラームの世界のことだからという枠組みでは片付けられない普遍的な話。女性の受難は今日も世界中でつづいている。女性たちよ、やられっぱなしでよいのか? 
 社会は貴女を守ってはくれない。ファイザは護身のためにメスを所持し、襲われたら、その男の急所を突くという一種の正当防衛手段に出る。678路線バスの男性加害者は被害者としてクローズアップされ、刑事が事件の捜査に乗り出す。ファイザと共謀者セバとネリーは、刑事の明察と理解のお陰で救われるが…。
 余談ながら、この刑事役のエジプトの俳優が、我らが名優オリヴィエ・グルメにどことなく似ていて良い味を出している。監督は34歳の新人、モハメッド・ディアブ。当初関係のなかった三つの点(ファイザとセバとネリーの話)がやがて一つに集約されてゆく構成。変な表現だが、即物的な映画だ。映画には自分が今いる所より彼方へ感情を高揚させてくれるものと、本作のように現実的な事象と対峙(たいじ)して考えさせられる映画がある。本作は丁度昨年1月の「エジプト革命」の最中に本国で公開されていたという。(吉)

Les Femmes du Bus 678



 

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