大統領選第1回投票(4/22日)得票予想率(2/21 : Ipsos調査)は、オランド社会党候補32%、サルコジ大統領25%、マリーヌ・ルペン国民戦線党首16%、中道民主運動党バイルー11%…という順位。決選(5/6日)得票予想率はオランド59%、サルコジ41%と差が広がっている。
それでも国民は、連日テレビやメディアが報道している闘志満々、ブロンドのマリーヌ・ルペンFN党首が父親に継ぐ移民排斥路線でどこまでサルコジ陣営にくい込むか興味津々。ところがルペン党首が正式に候補と決まるには高いハードルを跳び越えねばならない。市民は、選挙資金があれば誰でも大統領選挙に挑めると思いがちだが、立候補するには、村・市・県・地方・上下院・欧州議員まで4万5千人の代議員のうち500人の後援署名が必要。1962年法では100人の署名でよかったが、これではその辺の人でも立候補できるので、ジスカール・デスタン大統領時代の1976年に署名数が500に引き上げられた。ジャン=マリー・ルペン前党首は1988年以来、大統領選に登場し、07年選挙では規定数すれすれの507人の署名を得て立候補できたのだ。
マリーヌ・ルペン党首への2月21日時点の後援者数は、口約束した議員を含め430名だが実際の署名者は2、3割減るから、出馬登録期限3月16日までに500の署名集めに必死だ。保守派が強いブルゴーニュ地方の村長らに説得に歩きまわるFN党員の悪戦苦闘ぶりをメディアも報道しており、村長らの中には前回、FN候補を後援したことで他の議員ににらまれたという苦い経験をもつ村長も。大統領選第1回投票日の8日前に後援者名が公表され、地方紙はそれを発表するので、FN候補を後援した村長を白目で見る住民もいるわけだ。最近は女性村・町長が増えており、彼女らはイデオロギーよりも住民の生活面を重視するからFN 党首の後援者は減少の一途にある。
そこでマリーヌ・ルペンは1月に、後援者を匿名にする憲法改正願いを憲法評議会に提出した。が、2月21日、憲法評議会はFN党のために選挙法を改正するわけにはいかず現行法を維持するという決定を下した。ルペン党首は、実名による後援者署名制は少数政党を排除するためと強く批判する。「もし彼女が出馬できなかったら…」とどの候補者も皮算用。彼女が立候補できなくなれば、FN支持票の一部はサルコジ候補と、労働者に人気ある極左メランション左派党候補に流れるはず。窮地にあるルペン党首を脇目に与野党議員らは、「16%もの支持率のあるFN党首が選挙に出られないとしたらフランスの民主主義に欠陥あり」と同情顔で内心ほくそ笑みながら良識者ぶる。
サルコジ大統領は2 月15日に出馬宣言したが、ルペン党首が出馬してもしなくても彼女の支持票を獲得するために、FN党定番の経済危機・失業社会にぴったりの移民(イスラム系)排斥姿勢を先取りし、右傾化を強める。大統領は彼の尖兵、ゲアン内相に2月4日、全国大学連合主催の講演で「文明には優劣がある」と市民感情を逆なでするような暴言を吐かせ、決選得票予想率の逆転は望み薄ながら、左右二極政党対峙(たいじ)の選挙戦の露払いをさせているようだ。(君)