「魔女」というと、大抵の子供は「ほうき」、「月」、「ハリー・ポッター」と答えるだろう。わが娘の答えは「大きな鍋」だった。
この特別展〈魔女〉に行くと、悪魔、そして魔女という「悪」や「災い」の根源となる存在は、神話や聖書から発展して中世に大きく飛躍したことがわかる。ジャンヌ・ダルクが魔女裁判にかけられ火あぶりの運命をたどったように、疫病や戦争など不幸の数々は、実際に罪があるかどうかは不明でも「こいつのせい!」と一人の人間に罪がかぶせられた。そこには宗教的だけでなく、政治的な意図も含まれていた。魔女裁判のコーナーに大きなはかりが置かれている(写真)。「このはかりが実際の体重よりも軽い数字を示すとあなたは魔女とみなされる」とある。おそるおそる乗ってみると私の体重は90kg! 実際はその半分なので、ほっとする。
小学生グループが、悪魔と魔女が集うサバトの絵を見ながら「楽しそう」と話していた。そう、現在では悪魔も魔女も「怖い」というイメージが皆無なのだ。ガイドが「実際に魔女がいたと思う人は手を挙げて」と聞くと手を挙げる子供はほんの数人。
魔術は民間信仰とも深くつながっていた。治療師、祈祷師、占い師、催眠術師などは20世紀半ばまで魔術を使って病を治したり運をみる、と田舎では重宝がられてきた。人間とは本当に都合のよい生き物だと思う。日本では厄よけというけれど、こちらでは魔よけのために調理道具には十字が彫られ、パンを切り分ける前にも十字を切り、扉の上にアンモナイトの化石や馬の蹄鉄を付けたり、枕の下に火打ち石を置いたり…と数々の迷信が存在していたのも興味深い。(海)
Musée de la Poste : 34 bd de Vaugirard 15e
01.4279.2424 M°Montparnasse
www.laposte.fr/adressemusee
3月31日迄。10h-18h(木 -20h)。日休。
6.5€/5€(13歳以下無料)。