カフカの『変身』のようにある朝起きたら、というわけではなく、肉づきがよくなり、あちこちに体毛が生え始め、乳首の数が増え、顔つきが変わり、尻尾がにょきっと生え…という風に徐々にブタへと変身していく若く美しい娘ゾエ…。作家マリー・ダリュセックが、1996年にデビューを飾ったこの小説は、その大胆な発想と衝撃的な内容で話題を呼んだ。日本でも『めす豚ものがたり』という題名で出版されている。同小説を、いつも奇抜な発想で観客を驚かせることが得意なアルフレッド・アリアスがダリュセックと一緒に戯曲化、しかもアリアスがひとりで舞台に立つ、というので、原作は主人公ゾエの告白として書かれているけれど、舞台ではと興味津々。
雌ブタの面を被りセクシーなワンピースに身を包んだゾエ(アリアス)が告白を始める。舞台ではゾエの独白だけというわけにはいかず、雌ブタになってしまったいきさつは、ゾエがすれ違う人々によっても語られていく。ゾエが働く美容サロンの客、ゾエの存在を利用しようとする政治家の彼女、ゾエと相思相愛のオオカミ男…。語り手が変わり場面が展開する度に衣装が変わり面が変わる。空間を埋めるため、モノトーンにならないための苦難の策だとみた。無理があると思ったのは、いくら見た目を変えても、声を変えることは難しいということ。どの人物も同じ声質、ということが気になった。
なぜブタ?「ブタに真珠」とか「ブタのように食べ方が汚い」とかいうのは何故? 作家ピエール・マニャンは、ブタが人間に一番近く、人間はブタの挙動を見ながら常に悔恨の念にさいなまれているから、と分析した。だから人間はブタに辛く当たるのか。(海)
12/4まで。21h。4日15h。10€-34€。
Théâtre du Rond-Point :
2bis av. Franklin D.Roosevelt 8e
01.4495.9821.
2bis av. Franklin D.Roosevelt 8e
01.4495.9821.