3.11の東北地方太平洋沖地震・津波そして福島第一原発の事故という前代未聞の大惨事。原発は、放射性物質をいつまた再噴出するか分からない危険を未だはらみながらも収束への工程を歩み出したが、完全収束までにこの先何年、何十年かかるか分からない。原発の恐ろしさや原発推進派の愚行を、日本でも世界でも、この不幸な事態に至って、やっと実感・認識することになった。映画『ミツバチの羽音と地球の回転』は、中国電力が山口県上関に建設予定の原発に、26年間も反対運動を続けている地元、祝島の島民たちの闘いの様子を追う。と同時にカメラはスウェーデンに飛び、すでに再生可能な自然エネルギーにシフトしている村を取材する。鎌仲ひとみ監督は「スウェーデンは脱原発を国民投票で決め、2020年までに石油にも依存しない社会づくりをめざしています。実はエネルギーをシフトする背景には民主主義や情報の透明性、そして人権意識の高さがあることが見えてきました。スウェーデンはCO2を削減しながらゆるやかながらも経済成長を続け、質の高い福祉を実現しています」と述べている。
このドキュメンタリーの冒頭では、原発建設のために埋め立てが予定されている瀬戸内海の入り口にある田ノ浦の豊かな生態系を紹介、その海の幸で生計を立てる島民の姿が映し出される。私たちはすでに福島原発事故で故郷を追われた農民や酪農業者の苦悶を目にした。いつまで原発という愚かな人間の浅知恵が横行するのだろうか?
一つの可能性としてスウェーデンの場合を提示した鎌仲監督は『ヒバクシャ – 世界の終わりに』(2003)『六ヶ所村ラプソディー』(2006)とずっと核問題に取り組んでいる。核兵器保有国で原発推進最右翼のフランスでも、彼女の映画を上映して、人々の意識の覚醒(かくせい)に少しでも役立てばよいと思う。(吉)