レモンのタルトは、10年ほど前にこの欄で紹介したが、今回は市販の折り込みパイ生地pâte feuilletéeのかわりに自家製のパット・ブリゼpâte briséeという生地を使い、それも一度空焼きするという面倒を省いて、生地とレモンカスタードを一度に焼いてしまいます。
パット・ブリゼを作るのは簡単。そのうえ市販のものとはバターの量が違うので、味にぐ〜んと差が出る。バターを小さく切り分け室温に置いておく。ボウルに小麦粉をとり、砂糖、塩少々を混ぜ入れる。柔らかくなったバターを加え、指先を使いながら混ぜ合わせていく。全体がそぼろ状になったら、水を大さじ4杯か5杯加え、軽くこねながらソフトボール状の玉にする。焼き上がりをさくさくっと軽い歯ごたえにしたいので、こねすぎないことがコツです。ラップでくるんで2時間ほど涼しいところに寝かせておく。
次はレモンのカスタード作り。レモンは半個分の皮も使うので、〈non-traité〉と表記されているものを選び、ぬるま湯でしっかり洗う。半個分の皮はできるだけ薄くむき(下欄参照)、細く切り分ける。半分皮をむいた1個と残りの2個を搾る。小鍋にバター50グラムを入れ溶かす。コーンスターチを同量の水で溶いておく。ボウルに卵と砂糖をとり、泡立て器で勢いよく混ぜ合わせる。全体が白っぽくなってきたら、レモンの搾り汁と皮、バター、コーンスターチを混ぜ入れる。
オーブンの目盛りを180度に合わせて点火。直径28センチの型にバターを塗る。パット・ブリゼの生地を、めん棒を使って3、4ミリの厚さに延ばしたら、型におさめる。ここへレモンカスタードを流し入れ、熱くなっているオーブンへ。最初は皮がよく焼けるように下めの段に入れ、途中から中段にするとうまくできる。35分から40分ほど経って生地の縁がキツネ色になり、カスタードに軽い焼き色がついてきたら、オーブンから出す。型からタルトを取り出し、網の上で冷ます。さわやかなおいしさの初夏のデザートです。(真)
●レモンの皮
レモンやオレンジの皮をむいてから細く切って料理に使うことが多い。この皮をゼストzesteというが、今回のようなデザートだけでなく、オッソ・ブッコなどの肉料理や、魚介類のサラダのドレッシングに加えたりもする。子牛のブランケットを作る時も、隠し味としてレモンの皮を細く切って加えると、ひと味違っておいしいものだ。
かんきつ類は表面が防腐処理されていることが多いので、皮を使う時はできるかぎり表面に防腐処理がされていないものnon-trait?を選ぶこと。ぬるま湯でしっかり洗ってからよく切れるペティナイフでできるだけ薄く皮をむくことが大切だ。外皮の下の白い部分が残っていると苦みが出てしまいます。皮だけを引っかきとるzesteurという道具もある。(真)