同じオブジェでも、それぞれ育ってきた文化が違うだけで、すでに違うものとして目に映る。それは目の前にある「物」を認識するときに、各人自分の記憶をた
ぐり寄せながら目の前の物との「違い」と「類似性」を無意識のうちにみつけているからだ。『La Fabrique des
images』(7/17迄)という展覧会では、人類学の観点から集められたオブジェや芸術作品が一定の地域の住民にとってどのような意味を持っているか
が検証される。「万物の中に霊魂もしくは霊が宿っている」というアミニズムがテーマの展覧スペースでは、アラスカ、ユピック族の、魚が彫刻された仮面やア
ザラシなどの動物オブジェが飾られている。動物を狩猟しながら生計をたてるユピック族にとって、これらを身につけることで動物と身近な存在になれる…神道
や民間信仰にもこうした考えがある日本人にとってはあまり驚きはないけれど、展覧会を観る10歳の娘と友人には「捕まえるために動物を身につけるの?
残酷!」と判然としない様子。その一方で儀式に使う首飾りや冠、仮面の数々に目を輝かせながら「わっ、アザラシの歯を使ってる!」と驚いたり、
トーテミズムの展覧スペースで上映される儀式の映像に熱心に見入ったり…。
せっかくだからと、同時に開催されているもうひとつの展覧会
『L’orient des femmes vu par Christian
Lacroix』(5/11迄)へ。ラクロワが選んだシリアやパレスチナなど中東の美しい衣装やアクセサリーが展示され、「私これが好き」、「こっちのほ
うがきれい」と賑やかに見学が進む。しばらくすると、娘たちが、展示を見るよりもおしゃべりに熱心な奥様方の真似を身振り手振りつきで始めたので、そろそ
ろ潮時、と展覧会場を出る。(海)
Musée du quai Branly : 37 quai Branly 7e
火水日11h-19h、木金土11h-21h。8.5€/6€(18歳未満無料)。
Musée du quai Branly
Adresse : 37 quai Branly , 75007 PAriSURL : www.quaibranly.fr
火水日11h-19h、木金土11h-21h。