ノエルの夜に欠かせない薪型のケーキBûcheが生まれたのは、ほんの半世紀前のこと。それ以前はというと、復活祭前の日曜から取っておいたツゲと月桂樹(げっけいじゅ)の枝を燃料に、ワインを染み込ませた薪を夜通し燃やしてキリストの誕生を祝った。当時暖炉は調理場でもあったから、一家の生命の源である食を支える暖炉の火を絶やさないという行為には、来たる1年の豊作祈願も込められていた。もしも夜の間に薪が燃え尽きて火が消えれば、翌年その家族には不幸が起きると信じられ、ゆえに、薪は大きければ大きいほど良しとされた。19世紀、鋳鉄製ストーブの出現により、暖炉は急速に消え、Bûcheの伝統は、1945年に一人の菓子職人が考案した薪型のケーキに取って代わられ現在に続いている。(み)