神をも負かしたソースの主役、バター

 4500年前のメソポタミアに起源をおくバターが、フランスに登場するのは中世の時代。カトリックでは年間200日以上にも数えられる小斎の日には、肉はもちろん、ラード、バター、チーズ、卵も禁止されていた。脂肪分の摂取をオリーブ油に頼る南フランスはいいが、困るのは北フランス。南からオリーブ油を取り寄せるには日数もかかる上、通関税が加算され高価すぎるのだ。16世紀に入ると教会は子供や病人、兵士にはバターの使用を特認する。すると貴族やブルジョワも何らかの理由をつけて司教に特認を申し出る。料理が進化し、バターを使ったソースが次々に考案されると人々の好みも変化する。14世紀、バターで作られたソースが全体の5%なのに比べ、16世紀には70%、17世紀には85%に増加。厳格な宗教規制も人間のし好には勝てなかったというわけだ。(み)