使い回しの共有スプーン、各自携帯のナイフに遅れを取ってルネサンス期に現れたフォーク。イタリアから嫁入りのカトリーヌ・ド・メディシスが2つ又のフォークを持参した。当時流行の巨大な襟を汚さずに済むとアンリ3世が推奨しても、フォークは取り合ってもらえないどころか、宮廷で笑いの種だった。「がっついて指をかもうともシンプルに食べるのが一番」とはモンテーニュの言葉。肉を切るのに使っても、切った肉は右手で口まで運ぶ。人々は手で食べることを好み続けた。ルイ13世の王妃アンヌ・ドートリッシュもその美しい指を皿に入れ、料理が熱い時のために指サックまで用意されていた。手の使用を禁じる勅令を出したルイ14世自身も晩年まで手で食べていた。フォークの使用が本当に根付くにはフランス革命後の18世紀末まで待たねばならない。(み)