●仏独共同出資のテレビ局アルテの映画部門責任者にインタビュー
私たちが作家性の強い映画作品を享受できるのは、骨太テレビ局アルテARTE(www.arte.tv/fr)の影なる力が大きい。他局にくらべ映画への出資額は少なめだが、カナルプリュスさえも出資に及び腰な現在、アルテの肩に「文化の番人」の責任がさらに重くのしかかる。フランスの映画部門責任者ミシェル・リヤックさんにお話をうかがった。
「アルテは毎年約500本のシナリオを吟味し、最終的に約20本の企画を選び共同製作にふみきる。外国映画や新人作品への出資も積極的だが、ジャック・リヴェット、ダルデンヌ兄弟といった巨匠にも手を差し伸べる。なぜなら巨匠であっても、作家性が強いと他のテレビ局から出資を得るのが難しいからだ。
またアルテは、一般にタブー視されるテーマにも果敢に挑んでいる。広告業界を皮肉ったヤン・クーネン監督の映画『99フラン』は、他局がすべて出資を拒否したがアルテだけが受け入れた。しかし製作はいつも成功するとは限らない。シャンタル・アケルマン監督がコメディを作った時は、頭でっかちでまったく笑えなかった。有名作家ミシェル・ウエルベックが自身の小説を映画化した『La Possibilité d’une l’île』は退屈でちぐはぐな作品。本作への出資はアルテ史上一番の愚行となった。(笑)とはいえ、シナリオの段階では「アニメ+ドキュメンタリー」という形が前衛過ぎ、不安もあったアリ・フォルマン監督の『バシールとワルツを』は、アカデミー外国映画賞候補にもなるなど大成功をおさめた。これからもリスクを恐れず、映画作家をしっかり擁護したいと考えている」(聞き手:瑞)
*なおリヤックさんは、作家映画の未来について、映画監督フレデリック・ソシェール氏との対談本『Plaidoyer pour l’avenir du cinéma d’auteur』(Klincksieck社発行)を発表したばかりだ。