一つの映画作品が、フランス北部の人たちの誇りを取り戻させた。

 ダニー・ブーンが監督主演した映画作品『Bienvenue chez les Ch’tis ようこそ、シュティの国へ』が、フランス全国封切り1週間で観客動員数350万を超えるという、史上最大のヒットとなった。ch’ti(シュティ)あるいはch’timi(シュティミ)は、フランス北部ノール県やパ・ド・カレー県に住む人、あるいはその人たちが話している方言を指す。ch’tiは 「c’est toi」、ch’timiは「c’est moi」の意味で、第一次世界大戦中に、フランス北部から戦線に送られてきた兵士たちの「ch’ti? ch’timi?」という会話を耳に挟んだ他の兵士たちが彼らにつけたあだ名が由来だという。
 この地方は以前は炭坑で栄え、ポーランドやイタリアなどから多くの移民たちがやって来て辛い仕事に従事していたところだ。ところが最近は炭坑が閉鎖され、フランス人が「ch’ti」と聞いて頭に思い浮かべるのは、ボタ山、灰色の街、貧困、アル中、雨、風、寒さ、とネガティブな面が多かった。ch’tiの一人、ダニー・ブーンはシナリオも担当し、この地方に生きている人たちのユーモアや厚い人情に脚光をあてることに成功した。この「ch’ti」賛歌は、全国より1週間早くこの地方で封切られ、映画館の前は長蛇の列となり、その1週間で55万人以上が押しかけた。
 現在、ch’tiをおおよそ理解できる人は約200万人いるというが、この方言を完全に使いこなせる人は1万人足らずだという。ch’tiで小説を書き、この方言の普及に力を入れているギ・デュボワさんは「私たちの欠点は、私たちのアイデンティティを認めてもらうような努力をしないところだ。この中世以前から続いている方言の価値を国に認めさせ、中学校や高校で教えられるようにしたい。この方言は下品で、ゆがめられたフランス語だという人もいるが、エモーションとポエジーに富んでいて、涙を流させることだってできるんだ」と語る。(真)

 

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