昨年12月、サルコジ大統領はバチカンで「キリスト教はフランスのルーツ…、善悪の違いを教えるのに教師は神父や牧師に代わることはできない」と教皇に花をもたせ、サウジアラビアのリヤドではイスラムは尊い「文明の継承」と崇めているが、各宗教共同体に触手をのばすのは市町議会選のためだけではないようだ。 2月13日、仏ユダヤ人団体代表者評議会の夕食会ではユダヤ人共同体を喜ばせるためか招待者も唖然とする発言。小学最終学年CM2の生徒各自に、フランスから移送されホロコーストの犠牲者となったユダヤ人児童11 400人の中から一人を託し、その出生地から名前まで記憶にとどめさせるというもの。強制収容所の生存者でもある、ショアー記念館会長シモーヌ・ヴェイユ氏は大統領の隣で「それを聞いた時、血が凍った。10歳児が背負うには重すぎる問題」と衝撃を受けている。『ショアー』監督ランズマン氏も「安易すぎる同一化とその強制」を激しく批難する。 ![]() が、死の意味を解するようになるのは7歳頃からといわれ、それも親族の死をとおしてでありトラウマを生む場合もある。大統領は、 ナチスの意味も歴史的背景も解しえない子供の感情に訴え、国民が担うべき記憶と責任を課そうとしている。「なぜユダヤ人なの?」の質問に教員はどう答えるのだろうか。教育者らにも打診なしの一方的な大統領の発案は教育への暴力的介入と反発を深めている。 各界に批難の嵐を巻き起こした大統領の短絡発言は2月28日、大統領府により取り消され、ヴェイユ氏を含む新設の熟考委員会にホロコーストに関する教育指針の模索を委任。公営テレビからのCM排除発言同様に、大統領の奇抜な発想の尻拭いを担う委員会の開設がつづく。(君) |
