Lotte au fenouil
レストラン欄で紹介したアンコウlotteの料理を真似してみよう。ブール・ブランbeurre blancがちょっと難しいけれど、あとはいたって簡単だ。
フランスでは、アンコウは頭をとられた格好で魚屋に並んでいる(おいしい肝は時々別売りされている。そのレシピは595号参照)。アンコウの身はqueue de lotte、あるいは形が子羊のモモ肉に似ているのでgigot de merと呼ばれたりする。小骨がないので、フランス人が大好きな魚の一つだから、それだけ値段も張る。真っ白な身がふっくらと盛り上がり、皮がツヤツヤしているものを選びたい。600グラムから800グラムくらいのものを選び、魚屋さんに、軟骨をはずし、四つに切り分けてもらおう。アンコウが苦手だったり、魚屋になかったりしたら、真ダラcabillaudの厚めの切り身でもおいしくできる。
フヌイユを四つ割りにして芯を除き、薄く切ってレモンの搾り汁をふりかけておく。厚鍋にバターを大さじ2杯とり、それが泡立ってきたらフヌイユとみじんに切っておいたエシャロット2個を加え、木のヘラで混ぜ合わせながら5分ほど炒めたら、軽く塩、コショウ。タイムの葉を振りかけ、水をコップ半杯ほど加え、フタをしてフヌイユがくたっとなるまで煮ていくだけだ。弱火のオーブンにでも入れて冷めないようにしておく。
次はブール・ブランの準備(下欄参照)。
ブール・ブランができたら即座にアンコウを焼くことにしよう。クッキングペーパーで表面の水気をよくぬぐってから、塩、コショウし、軽く小麦粉をまぶす。フライパンに油とバターを半々にとり、中火にかける。バターが泡だって熱くなってきたらアンコウを重ならないように入れ、片面3、4分ずつ焼いて両面にきれいな焼き色をつけたい。
皿にフヌイユを敷き、アンコウをその上にのせ、周りにブール・ブランを流せばでき上がりだ。
ワインは、白でも、ほどほどに辛口なブルゴーニュ・アリゴテなどがおすすめだ。(真)
●ブール・ブラン
ブール・ブランbeurre blancというソースは川魚だけでなく、今回のレシピのように海の魚に添えてもおいしい。バターが分離しやすく難しい、と敬遠されがちだが、何回か作ってコツをのみ込めば大丈夫。
まず、バター200グラムは小さなさいの目に切って冷蔵庫に入れておく。細かなみじん切りにしたエシャロット4個を小鍋にとり、白ワインを大さじ9杯加える。酸味がほしかったら、たとえば、白ワイン大さじ3杯分をビネガー大さじ3杯にかえてもいい。
最初は弱火で、沸騰したら中火にして、白ワインを煮詰めていくと全体がエシャロットのピュレといった感じになるだろう。これを漉すと大さじ2杯分くらいの白ワインが残っているはずだ。これを小鍋に戻し、弱火にかけ、冷たくしておいたバターを一つずつ加えながら、泡立て器を使って勢いよく混ぜ合わせていけば、クリーミーでとろりとしたソースができあがる。もう少々火を通して(沸騰させてはいけない!)、全体が温かくなったら、塩、コショウで味を調えればでき上がり。
それでもまだブール・ブランがこわい人は、バターを加える前に生クリームを大さじ1杯とか2杯加えると分離しにくくなる。またエシャロットが大好きな人は別に漉す必要もない。
●fenouil
地中海沿岸からアジアにかけて広く栽培されているフヌイユ(ウイキョウ)は、その形といい爽やかな色合いといい、野菜の女王のような美しさで、トマトと並んでイタリア料理には欠かせない野菜の一つ。冷蔵庫の野菜ボックスに入れておけば1週間は持つので、常備しておきたい。食用とされるのはbulbeとかpommeと呼ばれる白い根茎の部分だ。できるだけ薄く切って、シブレットをたっぷり混ぜ入れ、レモンベースのビネグレットソースで和えれば素晴らしいサラダ。クレソン菜やルッコラ菜との相性も抜群だ。火を通すときは四つに割ってから中央の芯を取りのぞいてから、調理したい。柔らかい葉の部分は、サラダなどの香りづけにすると爽快感が口の中に広がる。
●アンコウのほっぺた
最近はアンコウのほほ肉joues de lotteも魚屋で見かけるようになった。これもなかなかうまいものだ。
ほほの両面に塩、コショウし、フライパンにオリーブ油をとって、ニンニク4片と一緒にさっと軽い焼き色がつくように炒めたら取り出す。白ワインを加えて魚のうま味を溶け込ませたら、あらかじめ作りおきしておいたトマトソースを加える。塩、コショウで味を調える。しばらくぐつぐつさせたらアンコウのほほを戻し、ふたたびぐつぐついってきたらでき上がり。最後に刻んだバジリコを散らせば、ほっぺたが落ちそうな南仏風。