4月22日の大統領選第1回投票に向けて候補12人(極左・左派6、右派2、中道1、極右2、エコロジー1)の選挙終盤戦たけなわ。 支持率連続トップの民衆運動連合UMP総裁サルコジは3月28日の調査では予想投票率26%、社会党PS候補ロワイヤル24.5%。彼らに迫る「第三の男」、仏民主連合UDFバイルーは19.5%。バイルーは2月以降、猛スピードで伸び、根強い人気で常に3位を占めてきた極右国民戦線FNルペン15%を追い抜く。この勢いでいけば第1回投票でPS候補かUMP候補のどちらかを追い越し決選に突き進む可能性も。 左でも右でもなく、保守党の補足的党とみなされてきたUDFバイルーの前大統領選得票率は6.8%。が、「左右二大政党政治」を打ち破ろうとする同候補は両党の地盤を浸蝕。61%のフランス人は左派にも右派にも期待してないというから、左派・右派の狭間で枝葉を伸ばしているのがバイルー候補なのだ。 連日メディアが株式相場か競馬実況のように報道する支持率の増減で候補らの口調・演説も千変万化。サルコジが左派層にこびて、偉大な社会主義者ジョレスや人民戦線内閣首班ブルムの名を口にしたかと思うと、数日後にはルペン票を稼ぐため移民問題と国家のアイデンティティを混ぜこぜに「移民・国家アイデンティティ省」の開設を提案。それに釣られたロワイヤルは「第6共和制」設立を公約にしながら、三色旗も国歌マルセイエーズも右派だけのものでなく、元々は革命が生んだものなのだから革命記念日には各家庭で国旗掲揚をと、マルセイユの集会で彼女の愛するジャンヌ・ダルクよろしく国歌を先に立って歌う。同候補はEU拡大とグローバリゼーションによる仏アイデンティティの希薄化を認め、04年国民投票でEU憲法に反対した投票者への譲歩だろうが、サルコジが仕掛けた罠にはまったよう。ロワイヤルは党の足かせを払い自作自演の選挙戦を続けてきたが、左派候補らしからぬ言動に党幹部も手をこまぬく。 3月27日、北駅で無賃乗車のコンゴ出身の男性の検札、逮捕で若者らと官憲との衝突事件が発生。30日の支持率はサルコジ39%、ルペン38%、バイルー19%、ロワイヤル17%とたちまち順位逆転。ルペン定番の国家のアイデンティティ問題と治安が終盤戦の争点となり、ルペンの陣地に引き込まれたロワイヤルとバイルーはへたすると足をとられかねない。 サルコジ、ロワイヤルの個人攻撃まじりの攻防戦が続く中、彼らの施政方針・公約も空回り。投票者の42%はまだ誰に投票するか決めてないというから、彼らは投票日の気分次第でサイを投じるのだろうか。(君) |
3月30日付パリジャン紙の表紙。
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